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   新ブログ 谷藤友彦ー本と飯と中小企業診断士
September 03, 2010

受賞論文からお気に入りをピックアップ(1999〜1998年)−『マッキンゼー賞 経営の半世紀(DHBR2010年9月号)』

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ダイヤモンド社
2010-08-10
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 (もうこれで最後)
 最終的に伝統的な3つの業務(注:カスタマー・リレーション業務、イノベーション業務、インフラ管理業務の3つ)はアンバンドリング(業務の分離分割)され、大規模なインフラ業務とカスタマー・リレーション業務と小規模で小回りのきくイノベーション業務に再統合されると予想される。

 各業界でアンバンドリングが進行していくにつれて、知らないうちに顧客と遮断されてしまった、と気づく企業が増えていく。(ジョン・ヘーゲル3世「アンバンドリング:大企業が解体されるとき」 1999年マッキンゼー賞金賞)
 「アンバンドリング」は「デコンストラクション」とも言われる。有名なのは、コンピュータ部品の製造プロセスを自社では持たず、組立と販売のみに特化したデルのビジネスモデルであろう。業界が成熟してくると、バリューチェーンの特定のプロセスを担う専門企業が現れ、それまでの垂直統合モデルがバラバラに分解されるという現象が観察される。これがアンバンドリング(デコンストラクション)である。

 デルがものすごい成功を収めたため(今は不良PCを販売した疑いで訴訟に巻き込まれているようだが)、アンバンドリングは新しいビジネスモデルとして高い注目を集めた。ところが、ヘーゲル3世は1つのネガティブな可能性を挙げている。それが「知らないうちに顧客と遮断されてしまった、と気づく企業が増えていく」という部分である。

 今やこの問題は現実のものとなっている。最初の記事で紹介したゲイリー・ピサノ他「競争力の処方箋」では、製造プロセスをむやみにアウトソーシングすると、イノベーションが起こらなくなることが指摘されている。また、最近は巨大化した小売業が消費者とメーカーの間に立って、ややもするとメーカーを販売現場から切り離していると受け取られかねない状況が見られる。

 例えば、家電メーカーはかつて自前で販売網を持っており、販売店から上がってくる顧客ニーズを製品開発に活かすというフィードバックループが存在していた。ところが現在、家電量販店からメーカーに上がってくる情報といえば、「他社は同じスペックの製品を○○円で売っていますよ。おたくも△△円ぐらいに下げないととうちでは売れませんね」といった価格情報ばかりになっているらしい。

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 生き残りのためには、長寿企業は事業を切り捨てることもいとわないことがわかる。事業や利益は、長寿企業にとって酸素のようなものである。すなわち、生きるために不可欠だが、生きる目的ではない。(中略)長寿企業は、事業が糧を得るための手段にすぎないことを承知している。しかし、これとは異なるモデルに従って経営される企業では、人を切り捨て、工場や装置を守る。(アリー・デ・グース「リビング・カンパニー」 1997年マッキンゼー賞銀賞)
 創業100年から700年という超老舗企業27社を研究した論文。長期にわたって存続する企業の研究と言えば、ジェームズ・コリンズの『ビジョナリー・カンパニー』が思い出される。コリンズの研究は長期にわたって高い業績を上げ続けている企業とそうでない企業を比較したものであるのに対し、グースの研究は単純に存続期間が100年以上に及ぶ企業を調査したものであるという研究手法の違いはあるものの、基本的な結論は共通している。つまり、時代を超えて存続する企業は、「基本的な価値観を確立し、その価値観に適った人材の育成と確保に注力している」ということだ。

 この結論自体は「確かにそうかな?」と思うのだが、よく考えると次のような疑問が浮かび上がってくる。

・「基本的な価値観」とはそもそも何なのか?価値観は物事の見方であるとすれば、基本的な価値観は「何に対する見方」なのか?
(市場、製品/サービス、技術、イノベーション、顧客/取引先との関係、競合との戦い方、人材マネジメント、業務プロセス、コミュニケーション、意思決定、社会的責任、コーポレートガバナンス・・・等々に対する見方??)
・基本的な価値観が「正しいかどうか」、「時代を超えて通用するかどうか」をどうやって知るのか?
・基本的な価値観は不変なのか?仮に、基本的な価値観が揺らぐほどの環境変化に直面した時、どのように対応すればよいのか?
・事業は基本的な価値観の上に成り立つものだが、生き残りのために事業を切り捨てても残る価値観とは、一体どのような価値観なのか?

 これらの問いに答えていくと、永続する企業の条件がもっとクリアになると感じた。
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