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September 02, 2010

受賞論文からお気に入りをピックアップ(2004〜2003年)−『マッキンゼー賞 経営の半世紀(DHBR2010年9月号)』

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2010-08-10
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 (続き)
 時間は、経営者の最も希少かつ貴重な資源である。政府機関であろうと、企業や非営利団体であろうと、組織というものは本質的に時間を浪費する。経営者が自分の時間配分を決められないようでは、アクション・プランは画餅にすぎない。(ドラッカー「プロフェッショナル・マネジャーの行動原理」 2004年マッキンゼー賞金賞)
 優れた経営者は、問題ではなくチャンスに焦点を当てる。(中略)ほとんどの企業では、月次報告書の第一ページに主要な問題点が書き連ねられている。むしろ、ここにはチャンスを書き出し、問題は次のページで取り上げたほうが賢明といえる。(ドラッカー「プロフェッショナル・マネジャーの行動原理」) 2004年マッキンゼー賞金賞
 前回の記事の最後で、ドラッカーの原則も万能ではないと述べた直後にドラッカーの言葉を紹介するのは若干気が引けるが、この言葉に関しては私は否定する要素はないと思う。

 経営者に限らず、我々は昨日までに起こった問題の解決を優先し、そこに多くの時間を割こうとする。しかし、問題の解決とはマイナスをゼロに戻す行為であり、それだけでは進歩がない。ゼロからプラスへの移行に時間を使える人が、環境変化をうまく利用して高い成果を上げられる。

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 ある日を境に人生が勤続期間とそれ以降といった具合にすっぱり切り離してしまう現行の退職制度は、もはや意味をなさなくなってきた。現在、模索されつつあるように、これから必要なのは、社員が何らかのかたちで企業に貢献し続け、それが本人と企業双方のメリットになる仕組みをつくることである。(ケン・ディヒトバルト他「『退職』という概念はもう古い」 2004年マッキンゼー賞金賞)
 シニア人材の活用も、女性活用と並んで今後の日本では非常に重要な課題となるだろう。どうやら今の若い世代は、自分が支払った社会保険料よりも、受け取る年金の方が少なくなることが確実のようだ。となると、65歳で退職などと言っていられず、働ける限りは働き続けなければならない。

 そもそも保険とは、万が一のリスクに備えるためのものである。年金制度も本来は、「万が一、退職後も長生きすることがあった場合に所得を保障する」という思想のもとに設計された。しかし、大半の日本人が65歳以降も生きるのであれば、もはや万が一のリスクとは言えず、保険で所得をカバーするという発想は破綻している。

 来るべき超高齢社会に向けて必要なのは、

(1)企業側が、65歳以降のシニア人材を活用する人事制度、職場環境を整えること。
(2)政府と人材業界が、十分な求人数と求職数のあるシニア人材の転職市場を整備すること。
(3)政府が、シニア人材の継続的な能力開発をサポートする職業訓練の環境を構築すること(これこそが、本来の意味での「生涯学習」である)。
(4)政府が、身体的理由などでどうしても働けない高齢者のために所得を保障する新しい保険制度を導入すること(これは本来的な保険の性質に適っている)。
(5)現在の年金給付額は思い切って削減し、(2)〜(4)の予算に回すこと。

ではないだろうか?

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 南アフリカやその近隣諸国で事業展開する企業は、従業員の10〜40%がHIV感染(エイズ患者ではない)であることを覚悟すべきである。同国では有効な治療薬が手に入らないという理由で、そのほとんどが今後10年間に死亡することになる。(シドニー・ローゼン他「エイズは企業課題である」 2004年マッキンゼー賞金賞)
 これは読んでいて衝撃的だった。10〜40%という数値の根拠が明らかでないため妥当性を検証できないのだが、少なくとも南アフリカでビジネス展開をする場合は、社員がHIV/エイズに感染するリスクを考慮しなければならないことを思い知らされた。ローゼンは、社員がHIV/エイズに感染した時のコスト(医療費や代替人材を採用するコストなど)を計算し、企業の潜在的リスクを明らかにする必要があると説いている。

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 用心しなければならないが、ほとんどの経営幹部が周囲の媚びへつらいにまったく疑問を感じない。(中略)周囲は善意でほめているのだが、その結果、リーダーは「世界でいちばん美しいのはあなたです」と答える鏡ばかりを見ることになる。(ロデリック・クラマー「なぜ地位は人を堕落させるのか」 2003年マッキンゼー賞銀賞)
 クラマーは、アメリカの政治学者ヘンリー・キッシンジャーの「権力は究極の媚薬である」という言葉も紹介している。出世すると権力という麻薬に誘惑されて、自分が何でもできるような錯覚に陥ることがある。そのことに警告を発する一文だ。

 上司が部下の忠告に耳を傾けることについて欧米ではどのように捉えられているのか知らないのだが、少なくとも中国や日本においては、部下の意見をよく聞くことが優れた上司の条件として比較的受け入れられているのではないだろうか?

 唐の太宗(李世民)の治世を記録した『貞観政要』は、君主の教科書として長年にわたり日中両国でよく読まれてきた。『貞観政要』には、臣下が太宗に様々な諌言を行い、それに太宗が答える様子が記録されている。臣下の中でも、魏徴という人物は200回以上も諌言したというすさまじさである。そして、徳川家康はこの『貞観政要』を手本にして江戸幕府を運営した。

 諌言を受け入れることをよしとする考え方は、「リーダーは決して完全無欠な人間ではない」という実に人間らしい人間観と、「集合知を活用すれば正しい答えにたどり着く確率が上がる」という共同体構成員に対する信頼によって成り立っている。これは日本人が大切にするべき美徳だと思うのである。

 (もうちょっとだけ続く)

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