※2012年12月1日より新ブログに移行しました。
>>>現行ブログ free to write WHATEVER I like
⇒2019年にさらにWordpressに移行しました。
>>>現行HP シャイン経営研究所(中小企業診断士・谷藤友彦)
August 28, 2010

食糧自給率の目標値自体はそれほど重要なことじゃない

拍手してくれたら嬉しいな⇒
 以前の記事「現在のフードシステムでは誰も得をしていないんじゃないか?」では、消費者からの値下げ圧力&安い輸入品が生産者の経営を圧迫していること、農産物の複雑で多層的な流通構造が薄利多売の流通業者を多数生み出していること、そしてこのままフードシステムが疲弊すれば、最終的に損をするのは我々消費者自身であることを指摘した。その上で、日本のフードシステムを回復させるためには、政府が積極的に介入する必要があることも述べた。

 「市場競争では価格競争力があるプレイヤーが勝つのが当たり前。ましてグローバル経済においては、安い輸入品が高い国産品を凌駕するのは当然の結果」という論者もいるが、供給が需要を大幅に上回っていればそれでも問題ないだろう。日本の自動車がアメリカ市場で受け入れられ、iPhoneやiPadに対して日本人が飛びつくことに対して、国内産業の戦略的劣位が危惧されることはあっても、それ以上に目くじらを立てることがないのはそのためである。

 だが、農産物は石油などの天然資源と同じように、供給に限りがある。グローバル規模で争奪戦が激化すると、資源国はまず自国での消費を優先するため、輸出が制限される。すると、海外依存度が高い国は深刻な供給不足に悩まされることになる。よって、そうならないように供給源を確保することが、資源安全保障における重要なポイントとなるわけだ。

 だからこそ食糧自給率の数値が注目されるのだが、個人的には自給率の数値自体にそれほど意味があるとは思わない。農水省は現在40%前後の食糧自給率を2020年度までに50%まで引き上げることを目標としている。しかし、その5%の差が国民生活にどの程度影響を及ぼすのかは不明である。

 そもそも、食糧自給率は算出方法(カロリーベース、金額ベース、品目ベース、数量ベース)によって結果が全く違ったものになるし、現在日本で用いられているカロリーベースの自給率(なお、世界的にはカロリーベースは少数派であり、金額ベースが主流である)の算出方法にも問題がある。

 例えば、国産の畜産物であっても、輸入飼料が用いられていると自給率に算入されない。飼料となるトウモロコシなどは大部分が輸入に依存しているため、畜産物の自給率は非常に低くなる。同様に、青果物や穀物の生育に不可欠な化学肥料の原料のうち、リン酸・カリはほとんど国内では採掘することができない(リン酸に至っては100%輸入)。

 にもかかわらず、青果物や穀物に関しては、国内で生産されていれば自給率に算入されるのであり、肥料の原料が海外産であるか否かは問わないのだ。リン酸やカリは特定の国に集中して存在しており、将来的に食糧需要が爆発的に拡大すれば、リン酸やカリが枯渇する危険性もある。そうすると、いくら自給率が高い品目であっても全く安心はできない。

 食糧自給率の数値だけを見てあれこれ議論しても、あまり実りのある結論は出てこないように感じる。数値よりも重要なのは、国民が将来に渡って必要とする食糧を国家としてどのように確保するかという大局的な視点だ。より具体的には、

 ・生産する場所となる耕作地および海域(※)
 ・生産段階で投入される肥料・飼料および水
 ・生産に携わる人材
 ・国内ではどうしても賄うことができない肥料・飼料・農産物

を確保するための効果的・複合的な戦略を立案し、実行することだと思うのである。

(※)海域は軍事戦略とも深く関連している。実際、中国は日中の境界線付近でガス油田開発を進めつつ、施設の上部に軍事へリポートを次々と建設している。中国は日本を直接狙っているわけではなく、朝鮮半島や台湾への影響力を強めることが目的だと言われる。

 仮に中国が台湾を制圧すると、中国は台湾のバシー海峡を通って太平洋に出ることが可能になり、アメリカとの緊張が一気に高まることが予想される。日本はちょうどアメリカと中国の間で板ばさみ状態になり、非常に難しい立場に置かれる。

 だから、海域に関しては、水産物およびエネルギー資源の確保という視点で農水省や経産省がバラバラに動くのではなく、防衛省、外務省を含む各省が緊密に連携して、日本の領海のあり方を中国に明確に示す姿勢が求められている。

川島 博之
東京大学出版会
2008-05-23
おすすめ平均:
物差し
食糧問題を考える上で、全体像を掴むことが出来る
食糧事情の変遷がよくわかる
柴田 明夫
日本経済新聞出版社
2007-07
おすすめ平均:
青沼 陽一郎
小学館
2008-03
おすすめ平均:
へたなホラーより恐ろしい
「開発輸入」の現場を歩いた良質なルポ
いつまでこの飽食は可能なのか?と震撼させるルポ
柴田 明夫
角川SSコミュニケーションズ
2008-09
おすすめ平均:
日本は果たして生き残れるのか・・・。
議論の前提に注意して読むべき
パラダイムシフト
posted by Amazon360
トラックバックURL

このエントリーのトラックバックURL:

コメントする