※2012年12月1日より新ブログに移行しました。よろしければこちらもご覧ください。
free to write WHATEVER I like
August 23, 2010

現在のフードシステムでは誰も得をしていないんじゃないか?

拍手してくれたら嬉しいな⇒
 日本の農産物は輸入品に比べると高いため、生産者はもっと努力して価格を下げるべきだという声が時折聞かれるが、実態はそんなに簡単な話ではない。生鮮品(野菜、果物、鮮魚、精肉)の流通構造は下図の通り非常に複雑である。農家が出荷した農産物は農協などの集出荷団体に集められ、そこから卸売市場に出荷される。卸売市場では、まず卸売業者が生鮮品を競り落とし、場合によってはさらに仲卸業者というもう1つの業者が仲立ちとなって、小売店に生鮮品を届けている。加工品も卸売業者が何段階にも重なって消費者の元に届く。おそらく、ここまで複雑な流通構造になっている業界は他にはあまりないだろう。

食品流通の構造

(農林水産省「流通コスト縮減の現状と課題」)

 農産物の市場は、生産段階では約12兆円であるが、消費段階では約80兆円に膨れ上がる。ということは、中間コストが非常に大きい産業だと言える。下図は流通コストの内訳を示したものでるが、生鮮品と加工品を見ると、いずれも卸売・小売経費という流通コストが約40%を占めていることが解る。

食糧供給コストの構造
(農林水産省「流通コスト縮減の現状と課題」)

 もちろん、これは平均値であるから、品目や土地によってその数値は異なってくる。ネットでいろいろと調べていたら、次のような調査結果を発見した。
 小売価格に占める生産者の受け取り価格の割合を主要8品目で見たところ、生産者の受け取り価格が5割を超したのはネギで51%〜59%、トマトが56%、キュウリが54%、リンゴが54%の4品目であった。
 また同受け取り価格が5割を大きく下回ったものは、ダイコンの24%、ハクサイで14%、キャベツ22%〜28%と発表されている。

 これをキャベツの場合を東京の例で見ると、キャベツ1kg(中玉1個)当り小売価格が約105円、仲卸価格(小売りの仕入価格)が約56円、卸価格(仲卸が荷受からの買付価格)が約50円、そして生産者の手に入る価格が約21円となっている。それぞれの段階で占める価格の構成割合を見ると小売が47%、仲卸が10%、卸が21%、生産者が21%となる。

 ミカンの場合を同じく東京に例で見て見ると、ミカン10kg1箱が、小売価格が3,545円、仲卸価格(小売りの仕入価格)約2,328円、卸価格(仲卸が荷受からの買付価格)が1,978円、そして生産者の手に入る価格が1,270円となっている。それぞれの段階で占める価格の構成割合を見ると小売が34%、仲卸が10%、卸が20%、生産者が36%となる。

 同じくミカンを大阪の例で見ると小売価格2,694円、仲卸価格1,870円、卸売価格1,574円、生産者価格1,099円となっており、価格構成の割合はそれぞれ31%、11%、18%、40%となっている。
http://www.mizuho-s.com/santyan58.htm
 消費者(および消費者の利益を代表する小売業者)は、輸入品との比較で少しでも安い食品を求める。流通コストは急激には変わらないため、価格が安くなれば生産者にしわ寄せがいく。農水省はフードシステム全体のコスト削減のために生産者にもコスト削減を求めているが、慢性的に赤字体質でぎりぎりの経営を強いられている生産者には、コスト削減の余地はほとんど残されていないと思われる。

 かといって、卸売業者や仲卸業者が儲けを出しているとも考えられない。これだけ流通段階に多数のプレイヤーが絡んでいれば、必然的に「超」薄利多売の世界となるからだ。実際、最近は生き残りをかけて卸売業者・仲卸業者が合併するケースも増えている。さらに、薄利多売と言えば小売業者も似たようなものだ。彼らもまた、現在のフードシステムで得をしているとは言えない。

 収入の少なさがネックとなって生産者が減少し、かつ流通を担うプレイヤーが疲弊すれば、最後に影響を受けるのは消費者である。消費者は国産の農産物を手に入れられなくなるかもしれない。そうした事態を回避するためには、

 (1)消費者が農産物に対してもっとお金を払うことを許容する(政府がエコポイントならぬ「フードポイント」を発行して、国産農産物の消費を促す??)
 (2)多段的な流通構造を簡素化し、流通コストを圧縮する(地産池消の推進によって流通コストを削減し、その分を生産者に還元する。もっとも、中抜きされた流通業者の雇用をどうするかという別の論点についての議論も必要)
 (3)農家に対する補助金をもっと厚くする(農産物の輸出国であるフランスなどでは、農家に対する補助金が日本よりずっと手厚いという。そのため、農家が農産物を大量に生産するインセンティブが働き、結果として自給率が100%を超えるに至っている。もちろん、票集めのためのバラマキだと有権者の目に映らないようにしなければならないが…)

などといった様々な打ち手を複合的に組合せることが必要になるだろう。

おススメの書籍

トラックバックURL

このエントリーのトラックバックURL:

コメント

"誰も"
→ということはないので結果的に(海外の)輸出国及び関係者は得しているんじゃないでしょうか。

消費者は国産の農産物を手に入れられるのが望ましい、という筋だけど、それが消費者の代弁かというと疑問があります。
安いものを手に入れたいという経済の話と(漠然と)お金に変えられないような安全の話が混じって結論ありきに読め、違和感があります。
そのあたりどうでしょう。
返信遅れました・・・
まぁ「誰も」は極端ですが、JAですら信用事業の黒字で農作物流通事業の赤字を補っているような状態ですから。

消費者が欲しいといっても、供給がそれに追いつかなければどうしようもないです。ウクライナなどが穀物輸出を禁止しましたが、仮に米豪が輸出をストップしたら、日本に小麦が入ってこなくなります。
(豪は干ばつの影響で穀物の貯蓄量が減っています)

なので、
・安ければ何でもいいという消費者の意識を改めること
(仮に輸入作物が入ってこなければ、多少高いお金を払ってでも国産のものを買わなければならないことを覚悟すること)
・一方で、生産側は何もしなくていいというわけではないので、国内での供給余地(代替品も含めて)を可能な限り高めること
という双方の努力が必要だと思います。

コメントする