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   新ブログ 谷藤友彦ー本と飯と中小企業診断士
May 28, 2010

21世紀の経営に必要なのは「OR」から「AND」への発想転換(3)

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 (その2からの続き)

ティーチングとコーチング
 コーチングに関する以下の記述は、私自身の体験に基づく勝手な思い込みが含まれている可能性がある点をあらかじめご容赦いただきたい。コーチングは、私が就職活動をしていた頃に異常に流行った記憶がある。コーチングの本もたくさん出版されたし、ビジネスに対する意識が高い学生は、自主的にコーチングの勉強会に参加したりもしていた。彼らが勉強会から戻ってくると、すっかり「コーチング万能主義者」に変心していて、あらゆる場面で周りの学生たちにコーチングを試そうとするのである(こういう経験があるので、私はどうもコーチングというものを素直に受け入れられない)。

 だが、コーチングだけで人が育てられるはずはない。コーチングは相手の心の中に答えがあるという前提に立っており、コーチによる様々な質問を通じて自発的な解への到達を促すコミュニケーションである。ということは、相手の頭の中には、自ら考えるための材料がある程度備わっていることが条件となる。その素材なしにコーチングを行っても、相手は答えを導出できない。だから、まずはティーチングを通じて基礎的な素材を習得させなければならないのである。

ジョン・ウィットモア
ソフトバンククリエイティブ
2003-07-30
おすすめ平均:
なぜコーチングなのか
インナーゲーム理論に基づくコーチング
コーチング本として読むべき優先順位は低いか
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 本のタイトルはあえて出さないが、コーチング万能主義は「会社に遅刻してきた新入社員にもコーチングで接する」ことを勧めるようだ。いきなり怒るのではなく、「どうして今日は遅刻したの?」、「明日から遅刻しないためにはどうしたらいい?」と懇切丁寧に聞かなければならないらしい。こんなのはバカバカしくて話にならない。

外発的動機と内発的動機
 モチベーション理論における代表的な二元論がこの「外発的/内発的」という区分である。マズローの欲求5段階説を知っている人ならば、「ピラミッドの最上位には『自己実現欲求』が位置づけられているから、内発的動機の方が優れている」と思うかもしれない。

 しかし、マズローの説はあくまで「仮説」であって、科学的に証明されたものでも何でもない。さらに、経営学者の沼上幹教授によると、「アメリカ人でも自己実現欲求を持っている人はごくわずかであり、大多数の人が持っているのはその1つ下の階層にあたる『承認欲求』である」という。「承認欲求」とは「他人から認められたい、評価されたい」という欲求であるから、外発的動機にあたる。

 そもそも、外発的/内発的動機は理論上では切り離すことができても、現実生活では複雑に絡み合っている。内発的動機づけを提唱したエドワード・デシですら、「外発的動機の内部化」という現象を指摘しているぐらいだ。つまり、最初は上司から命令されて渋々やっていた仕事でも、何らかのきっかけで面白いと思えるようになり、次第に上司から命令されなくとも、あるいは特別な報酬を与えられなくとも、自ら進んでその仕事をやるようになることがあるということである。

 逆に、内発的動機だけで長く活動できる人間は果たして存在するのだろうか?不安定な収入に耐えながら自己表現のために作品を創る芸術家でさえ、展示会で他者から高い評価を受け、コンクールで上位に入賞することを願う。彼らでも、外発的動機づけを必要としているのである。

 考えてみれば、人間とは社会的な生き物であるから、他者からの影響を無視して生きることはできない。他者から褒められたり貶されたりすることによって、モチベーションが上がったり下がったりもする。自分の内面から湧き上がる純粋な内発的動機のみで生きる人間は、芯が強いというよりも、むしろ社会から遊離した孤独な存在と言わざるを得ないだろう。

エドワード・L. デシ
新曜社
1999-06-10
おすすめ平均:
人を育てる立場に立つ多くの方に一読してほしい一冊
帯通り「人間観が一変」しました。
「人を育てる」ことの本質を学べる本
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