※2012年12月1日より新ブログに移行しました。自分で言うのもおこがましいですが、20代の頃に書いた本ブログよりも、30代に入ってから書いている現行ブログの方がはるかに中身が濃く、内容が多岐にわたり、面白いと思いますので、是非ご覧いただけるとありがたいです!
>>>現行ブログ free to write WHATEVER I like
May 20, 2010

ビジョンの3要素「目的」「価値観」「未来イメージ」はどう関係し合っているのか?

拍手してくれたら嬉しいな⇒
 先日の記事「ビジョンを構成する要素とは一体何なのだろうか?」では、『ビジョナリー・カンパニー』の著者ジェームズ・C・コリンズと、『ザ・ビジョン』の著者ケン・ブランチャードの見解を紹介し、ビジョンを構成する要素は「目的」、「価値観」、「未来イメージ」の3つであると整理した。では、この3つの要素はお互いにどのように関係し合っているのだろうか?

(1)目的
 あらゆる生物が究極的には「種の保存」を目的として生存しているように、あらゆる企業や組織も目的を持って存在している。目的のない組織は、社会からその存在を認められない。つまり、目的とは、社会から与えられた「生存の許可証」のようなものである。

 ただし、目的は崇高である代わりにどうしても抽象的にならざるを得ない。生物の究極の目的が「種の保存」であるならば、企業の究極の目的はドラッカーが述べたように「顧客の創造」ということになる。もう少し具体化するとしても、例えば製薬業界であれば「医療技術を活用して人類の健康に貢献する」、エンターテインメント業界であれば「顧客の期待を上回る驚きや感動を与え、人々の生活を精神的に豊かにする」といった感じにしかならない。

 何が言いたいのかというと、目的そのものは、少なくとも同じ業界内ではそれほど差が出ないということである。目的は企業が社会に存在するための「最低限のお許し」にしか過ぎないのであって、競合との差別化を行って競争に打ち勝ち、環境変化を乗り越えながら、長きに渡って存続するための要件とはならない。

(2)価値観
 各社の事業活動に多様性を与える上で貴重な役割を果たすのが、この「価値観」である。価値観とは「何を重要視するか?」という判断基準であり、「企業を取り巻く世界の捉え方」や「企業や社員が取るべき行動の選択肢」に大きく影響している。

 多くの企業のHPには「企業理念」というページが設けられており、その中に「行動規範」という形でその企業の価値観が明文化されている。その数はたいてい3つから5つぐらいに集約されているが、実際に事業活動を左右する価値観は多岐に渡る。それこそ、組織文化のレベルにまで埋め込まれた暗黙的な価値観も合わせれば、その数は限りがないだろう。そうした無数の価値観が、事業環境に対する経営陣や社員の見方に影響を及ぼし、彼らがどのような行動を取るかを規定しているのである。

 企業や社員が持つ価値観のカテゴリとしては、次のようなものが考えられる。カッコ内には価値観の例を示してみた。ただし、カテゴリにしても価値観の中身にしても、実際にはありとあらゆるものが考えうる。

 ・ステークホルダーの優先順位(最優先にするのは株主か、顧客か、社員か、それともそれ以外のステークホルダーか)
 ・社会的責任に対する考え方(法令順守にとどまるのか、それ以上を追求するのか)
 ・顧客との接し方(顧客との接点を大事にするのか、あえて顧客の声を聞かないようにするのか(※1))
 ・製品コンセプト(簡潔さを追求するのか、高度さを追求するのか)
 ・競合他社との戦い方(真っ向から勝負するのか、勝負を避けて安泰な市場を狙うのか)
 ・イノベーションへの取り組み方(社内でイノベーションに積極的に投資するのか、他社のイノベーションをうまく活用するのか)
 ・新規事業に対する取り組み方(リスクを奨励し無数の事業に挑戦するのか、事前の十分なフィージビリティ検証を重視するのか)
 ・社員の採用・登用の仕方(内部育成を重視するのか、転職市場を積極的に活用するのか)
 ・社員の育成の仕方(OJTを重視するのか、OFF-JTを重視するのか)
 ・取引先・仕入先との関係(単なるコストセンターと見るのか、自社の製品・サービスの品質を上げるパートナーとみなすのか)
 ・意思決定の仕方(現場社員を意思決定に参画させるのか、トップダウンで意思決定を行うのか)
 ・業務プロセスの設計の仕方(スピード・効率を追求するのか、斬新なアイデアが生まれる業務を重視するのか)
 ・社内におけるコミュニケーションのあり方(リアルコミュニケーションを重視するのか、バーチャルコミュニケーションを重視するのか)
 ・社外への情報の発信の仕方(徹底的な秘密主義に徹するのか、あえていろんな情報を発信するのか(※2))

(※1)『イノベーションのジレンマ』の著者であるクレイトン・クリステンセンは、顧客の声を聞き過ぎる企業は「破壊的イノベーション」の犠牲になる危険性が高いことを指摘している。ジェームズ・コリンズによると、ソニーの基本理念には「顧客の視点」がないという。これは、ソニーが顧客のニーズに従って製品開発をするのではなく、顧客が思いつかないような製品を開発することを重視しているためと考えられる。

(※2)アップルの徹底した秘密主義は有名である。一方、テーブルマーク(旧加ト吉)は、何かと情報発信にネガティブになりがちな食品業界の慣行を逆手にとって、twitter上で積極的に消費者とコミュニケーションを取り、ソーシャルメディアを活用したマーケティングに注力している。

(3)未来イメージ
 目的を実現するための手段は多岐に渡る。ちょうど、大阪から東京に行くのに様々な手段があるのと同様である。時間を優先するならば飛行機や新幹線で、ドライブを楽しみたいのならば自動車で、コストを優先するならば深夜バスで(「水曜どうでしょう」みたいに、あえて旅を辛くするために深夜バスを選択するということもあるかもしれない(笑))、あるいは己の限界に挑戦するために「走る」(何年か前、24時間テレビで間寛平さんが挑戦した)という手段もある。

 目的を達成するのに複数の手段がある際、そのどれを選択するかは価値観にかかっている。上記の大阪−東京の移動の例でもそれがお解りいただけるだろう。経営においても、企業が掲げた目的の実現に向けて、どのような選択肢を取り、どのような行動を取るのかは、その企業や社員が持つ価値観に依存している。

 企業や社員が様々な価値観に従って行動を繰り返した結果として現れる世界が「未来イメージ」に他ならない。未来イメージは目的に向かう途中段階ではあるが、抽象的な目的に比べてはるかに具体的なものとなり、認識しやすくなる。

 先の大阪−東京間の移動の例で言うと、飛行機や新幹線を選択すれば「快適でスピーディーな移動」や「忙しい仕事の合間にできる束の間の休息時間」が、自動車を選択すれば「途中で各地の名所に立ち寄り、名産に舌鼓を打つ楽しみ」や「高速道路を突っ走る快感」が、深夜バスを選択すれば「多少体が痛くなるかもしれないが、1泊分のホテル代が浮き得した気分」が未来イメージにあたるだろう。

 価値観が多様であることによって、未来イメージも多様になる。そして、この多様性こそが自社と他社を区別するカギとなり、競争力の源泉になっていくのである。

おススメの書籍

トラックバックURL

このエントリーのトラックバックURL:

コメントする