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   新ブログ 谷藤友彦ー本と飯と中小企業診断士
April 20, 2010

入社後4年目からのキャリア開発−内発的動機を育て、仕事に自分色を加える

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 社会人は入社してから3年で一人前と言われるが、「10年ルール」という言葉があるように、ある分野を本当に極めようと思ったら、3年では全然足りない。だが、大方の企業において研修が行われるのは3年目までぐらいであり、そこから管理職に上がる30代中盤ぐらいまでは必須研修が全くと言っていいほどない。この「空白の7年間」は、現場の仕事の中で、自らの意思と責任に基づいて能力を高めていかなければならないのである。

 ボストン・コンサルティング・グループ(BCG)の著書『法人営業「力」を鍛える』に、興味深いデータが載っている。ある化学メーカーで、営業スタッフの営業経験年数をX軸に、営業スタッフの成績(3年間の売上成長率)をY軸にとって散布図を作成したところ、両者の間には何の相関関係も見られなかったという。これは、「営業経験が長くなればなるほど、営業成績もよくなるはず」という我々の通念とは反する。

 営業職も通常は新卒から3年目ぐらいまでにスキル研修をまとめて行い、後は現場での実践を重視する企業が多い。だが、必須研修がなくなった後の「空白の7年間」をどのように過ごすかによって、その後の営業成績は大きく変わってくることをこのデータは示唆しているように思える。

今村 英明
東洋経済新報社
2005-04-15
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 昨日の記事「入社後3年目までのキャリア開発−仕事の仕組みを知り、自分の得手・不得手を見極める」では、入社後3年目までは、入社時に抱いていた「やりたい仕事」にこだわることなくいろんな仕事に触れ、上司や先輩、顧客などいろんな人から褒められたり叱られたりしながら、入社前には解らなかった得意分野や好きなことを少しずつ見極めていくことが大切だと書いた。

 では、入社後3年目以降、つまり冒頭で述べた「空白の7年間」はどうすればよいのか?3年目までは「外発的動機づけ要因」に注目したが、4年目からはいよいよ「内発的動機づけ要因」が本領を発揮する。なお、ここでいう「内発的動機づけ要因」とは、下図にある【1】「自分自身の興味、好奇心、得意分野(図中には「得意分野」を書くのを忘れた)」、【2】「達成感、充実感、やりがい」、【3】「仕事に対する意味づけ」を指す。

動機づけ要因の構造

 一言断っておくと、「内発的動機」はそれ単独で機能することは少ない。「面白そうだと思う仕事をやってみる」(内発的動機)⇒「仕事をサポートしてくれるいい同僚がいる」(外発的動機)⇒「仕事の成果を上司が評価してくれる」(外発的動機)⇒「成果に対していい評価をもらい達成感を感じる」(内発的動機)⇒「その仕事がますます得意・好きになり、さらに打ち込む」(内発的動機)といった具合に、「外発的動機」と「内発的動機」は複雑に絡み合っている。

 私のブログも基本的には「ただ好きだから」という理由で書いている。いわば「内発的動機」である。とはいえ、好きだからという気持ちだけで5年近くもやってこれたわけではない。ページビューやRSSリーダーの登録者数が増え、コメントやアンケートでいい評価をもらうと、それがまたブログを書き続けるインセンティブになる。「外発的動機」に負うところも大きいのである(そういう意味でも、いつもブログを読んでくださる皆様、本当にありがとうございます)。

 3年目までにおぼろげながら見えてきた「得意分野、好きなこと」という「内発的動機」の芽を、「空白の7年間」では大切に、大切に育てていく。そうすると、先ほど書いたような「外発的動機」との関係で好循環が生まれ、大きな成果を上げられるようになる。BCGのデータで、経験年数が長くても営業成績にばらつきが生じる1つの要因として、こうした好循環を営業担当者が持っているかどうかという点が挙げられると私は考える。

 しかしながら、「外発的動機」は「他者」という不確定要素に影響される不安定な動機であるのと同様に、「内発的動機」は「自分の気分」に左右されるという、これもまた不安定な動機である。特に【1】「自分自身の興味、好奇心、得意分野」はそうだ。興味や好奇心は長く続くとは限らない。私だって、いつ自分のブログに飽きるか解らない(事実、1年近く書くのを放棄していた時期もある)。

 私の会社の代表は、以前はアクセンチュアというコンサルティングファームに所属していた。コンサルティングファームは一般の事業会社に比べて離職率が非常に高い。離職者の中には、能力不足で辞めていく人もいるが、コンサルタントとして外部から組織を見るよりも事業を自分でやった方が面白そうという理由で辞めていく人とがいる。興味や好奇心は移ろいやすいのである。

 【2】「達成感、充実感、やりがい」というのも、効き目が切れる時がくる。ゲームを思い浮かべると解りやすい。どんなに面白いと思ってはまったゲームでも、ある程度のレベルまで行ってしまうと達成感がなくなり、やがてゲームをやらなくなる(だからこそ、ゲーム会社は次から次へと新しいゲームを開発しなければならなくなる)。営業担当者の中にも、会社が与えたノルマだけでは物足りず、自分の中でさらに高い目標を掲げてそれをクリアすることに執念を燃やすタイプの人がいるが、青天井で売上が上がるわけではないから、彼の目標もやがて頭打ちになる。そうすると、「内発的動機」の効き目が切れてしまう。

 「内発的動機」を長続きさせるヒントは、残った【3】「仕事に対する意味づけ」にある。【3】は「自分の仕事の使命」と言い換えてもいい。「なぜこの仕事を自分はしなければならないのか?」、「自分の仕事が社会に与える意味とは何か?」という、やや哲学じみた問答を繰り返す。使命とは終わりのない旅であり、それゆえに長い将来を見据えた抽象的なものにならざるを得ない。しかし、抽象的であるということは、包括的であるということでもある。つまり、些細な興味の移り変わりや達成感の変動を超えて、自らの選択肢を増やすことにつながる。

 以前、「何かを諦めざる時こそ、大切な価値観に気づく」という記事で、ひじのケガのためにプロ野球の道を経たれた山下という人物の話を紹介した。大好きな野球はもうできない、そんな時に彼を奮い立たせたのは、「仕事の意味づけ」という「内発的動機」であった。

 彼はなぜ自分がこんなに野球に夢中になっていたのかを改めて振り返ったのだろう。野球選手は、華やかなプレーで人々を魅了し、感動を与えたいと思っている。それを山下は再解釈した。彼は自分の使命を「野球を通じて人々に夢と感動を与えること」とした。このように意味づけると、必ずしも自分がプレイヤーとして活躍するだけがその手段ではなくなる。だからこそ、山下は「日本で埋もれている逸材をアメリカへ連れて行く」という新しい仕事にやりがいを見出すことができた。

 山下の例はかなりドラマティックであるが、ビジネスパーソンは誰しも自分の仕事の使命を見つけることができると思う。もっとも、「空白の7年間」だけでは使命は見つからないだろう。しかし、使命に目を向け、使命と向き合おうとする姿勢が大切である。使命こそが最も持続性の高い「内発的動機」と言える。そして、使命は自己のアイデンティティと深く結びつき、仕事において自分らしさを表現するのに役立つと思うのである。
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