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March 27, 2010

部門のミッションに合ったKPIを設定しよう

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 さて、昨日の記事「スコアボードを見ずに野球ができるか!−プロセス指標の必要性」では、最終目標に到達するまでのプロセスをマネジメントする指標をKPIとして設定し、KPIの値をモニタリングすることの必要性について触れた。

 部門の業績評価制度や、業績評価と連動する社員の人事評価制度を設計する上でも、KPIという考え方は非常に重要だ。なぜならば、「名ばかり成果主義」の過ちを防ぐことができるからである。「名ばかり成果主義」は、成果を最終結果と履き違えている。社員の間には、とにかく結果を上げればどんな手段を使ってもいいという風潮が生まれ、結果的に社員同士の疲弊を招く。これは成果主義ではなく、結果主義(業績主義)とでも言うべきものである。

 本来の成果主義はこれとは違う。アメリカの成果主義の発展の歴史を見ていくと、成果主義が結果ばかりを見ているのではなく、プロセスも重視していることに気づく。プロセスの中には、短期的な結果には結びつかない種まき的な活動や、社員同士の協業、ナレッジの共有なども含まれる。この点を日本企業は見落としていた。

 ちょっと話が逸れてしまったが、KPI体系を策定する際には、「部門のミッションや役割に合ったKPIを設定する」ことがポイントだ。先日の「評価制度を間違えると社員の行動はおかしな方向へ導かれる」という記事では、あるコールセンターの事例を紹介した。

 収益性を高める必要性に迫られていたコールセンターでは、2つのチームが別々のKPIを設定した。あるチームは「1コールあたりの所要時間(の削減)」を、別のチームは「顧客1人あたりのコール回数(の削減)」をKPIにした。

 前者のチームは、とにかく早く対応を終わらせて電話を切ろうと皆が必死になるのだが、顧客は自分の問題が解決しないため、何度も何度も電話をかけてきてしまう。1コールあたりの時間は短くなっても、コール回数がその効果を打ち消すほどに増えてしまい、収益をむしろ圧迫する結果となった。

 一方、後者のチームは、極端な言い方をすれば顧客が同じような問合せを二度としてこないように、ファーストコールで懇切丁寧に説明することを心がけた。1回目の対応時間は長くなったものの、2回以上電話をかけてくる顧客が大幅に減ったために、総合的には収益が改善されたという。

 両チームのKPIの違いは微妙なものだが、結果は全く異なるものとなった。コールセンターのミッションは、アフターサービスに対する顧客の満足度を高めることにある(それがリピート購入につながる)。収益性は確かにクリティカルな問題ではあるとはいえ、顧客満足度よりも優先されるわけではない。もし収益性だけを重視するのであれば、最初からコールセンターなんて止めてしまえばいいだけの話である。

 前者のチームは部門のミッションを軽視し、収益性という自社都合の題目のみに目が行ってしまった。これに対して後者のチームは、顧客が少ないコール回数でトラブルを解決できることが満足度につながることを見抜いていた。だからこそ、「顧客1人あたりのコール回数(の削減)」をKPIとして設定することができたのだろう。

 部門のミッションに合ったKPIの設定の例としてもう1つ取り上げたいのが警察である(私は警察の評価制度に詳しいわけではないので、ここからの記述は多分に推測を含んでいます。もし誤りがあったらお詫びします)。警察のミッションはいろいろあるが、道路交通に絞れば「市民が交通規則に従う安全な社会の実現」ということになるだろう。

 ところが、警察は「スピード違反切符を切った枚数の多さ」で評価される時期があるのか、やたらと取締りが厳しくなる時期が年に何度かある。しかし、よく考えれば、違反切符をたくさん切ればいいというのは、警察のミッションからすれば全く逆方向に走っていることになる。もしミッションに忠実なKPIを設定するならば、「スピード違反件数の減少率」になるはずである。

 ただし、これだと警察官が怠けてスピード違反切符を切らなければ、勝手に違反件数も減ってしまう。そこで、複合的なKPIを設定する必要がある。警察の怠惰でスピード違反が増えれば、交通事故が増えるはずであるから、「スピード違反の減少率」と合わせて、「交通事故件数」も見ればよい。または、近隣住民から寄せられる、「近辺で危険な運転をする車が多い」といった「苦情件数」をカウントする方法も考えうる。いくらスピード違反件数が減っても、交通事故や苦情が増えているのであれば、警察の交通指導が行き届いていないことになる。

 警察の例はあくまで私の勝手な推測で恐縮だが、要は部門のミッションや役割をよく考え、その実現に貢献する指標を特定することが重要だということである。この点を間違えると、社員の行動は部門のミッションを無視して、いい評価を得るがためにおかしな方向へと導かれることになる。


《2012年4月6日追記》
 警察の例は今読み返しても「これで大丈夫かな?」と思うけれど、今のところ警察関係者から意見や苦情は来ていないので(単にブログが読まれていないだけか、汗)、このままにしておこう。

 警察の例のように、KPIの”合わせ技”で成果を測定した方がいいと感じた事例が『日経情報ストラテジー』2012年5月号に載っていたので紹介したい。ブライダルビジネスを展開するエスクリは、ブライダルプランナーの成果測定指標として「成約率」を重視しており、BI(ビジネスインテリジェンス)による顧客データの分析から成約率向上につながるノウハウを抽出し、プランナーにフィードバックする、という仕組みを整えている。

 ただし、「成約率」というKPIを重視するあまり、弊害もあったようだ。
 データによって意識を統一できていなかった頃は、KPIも有効に機能しにくかった。一部の現場では成約率のKPIを意識するあまり、電話のやり取りで手応えを感じられなかった見込み客に対して来館を促すことに消極的になるプランナーもいたという。
 成約率=成約数÷来館数であるから、分母を減らすことで成約率を上げようという意識がプランナーには働いてしまっていたわけだ。とはいえ、分母が大きくならない限り、いくら成約率が上がってもビジネスとしては不調に終わる。

 このケースでは、「成約率」と合わせて「来館数」もKPIにするとよいのではないだろうか?一見両立が難しいKPIを敢えて設定することで、「電話では成約の手応えがなさそうだった見込み顧客から成約を獲得するには、通常の見込み顧客とは違ってどのようにアプローチをすればよいか?」とか、「本当に成約の可能性がなさそうな見込み顧客を電話とのやり取りで識別するには、どういう質問を投げかければよいか?」などといった、新たなノウハウが生まれる余地が出てくるだろう。

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