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   新ブログ 谷藤友彦ー本と飯と中小企業診断士
March 26, 2010

スコアボードを見ずに野球ができるか!−プロセス指標の必要性

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 いよいよセ・リーグが開幕し、また野球シーズンがやってきた。今年の阪神はどうなるかなー。打線は結構面白そうだけれど、昨年に続き先発陣がやっぱりちょっと不安だなぁ。

 さて、野球にはスコアボードが存在し、各イニングの得点が一目で解るようになっている。また、SBOのカウント表示や塁上のランナー、さらには守備位置といった定量的、定性的なデータが数多く散らばっている。攻撃側も守備側も試合のプロセスとともに常に変化するデータを見ながら、状況に応じた様々な戦術を展開する。これが頭脳戦としての野球の醍醐味である。

 ところが、ビジネスの世界になると、プロセスが軽んじられ、最終結果ばかりがフォーカスされる傾向にある。例えば、営業部門では、社員が毎日一生懸命営業活動をしているにも関わらず、マネジャーは受注金額や失注商談しか見ておらず、期末が近づいても予算未達だと「何が何でも売れ!」と無茶なハッパをかける、なんてことはよくある話だ。マネジャーがもっと日々の営業プロセスをモニタリングし、必要に応じて適切な打ち手を施していれば、こんなことにはならないはずである。

 ウェブマーケティングの場合も、BtoC向けのECサイトであれば最終的な売上、BtoB向けの製品紹介サイトであれば資料請求や問合せの件数ばかりに目がいってしまう。売上や資料請求、問合せの件数が少なければ、上司から「一体、どうなっているんだ?」と責められる。マネジャーも担当者も、サイト訪問者がどのようなルートでサイトを訪れ、サイト内でどのような行動をたどっているのかをきちんと分析しているケースは、決して多いとは言えない。

 これは野球に置き換えて言えば、各イニングの得点も、SBOのカウントも、塁上のランナーも解らないままにバッターボックスに入り、ピッチャーマウンドに上がるようなものである。序盤で3点ビハインドのケースでの先頭打者の役割と、1点リードで終盤を迎え、1アウトで1塁にランナーがいる場合の打者の役割は全く違う。同様に、ピッチャーの配球の組み立て方も変わってくる。だが、スコアボードが見えないからそうした判断もできない。

 また、ボールカウントが見えないと、今の状況が打者有利なのか投手有利なのかも判然としない。だから、バッターもピッチャーもお互いにどう攻めていいのか迷ってしまう。こんな状態で試合が続いていくと、いつの間にか試合が終わっていて、ふたを開けてみたらどちらかが大差で負けていた、なんてことになっているかもしれない。やっている方にとっても観ている方にとっても、全くもって訳が解らない試合になってしまう。

 もちろん、野球の世界ではどう考えたってこんなことはありえない。だが、ビジネスの世界では実際に起こっているのだから不思議だ。要は、プロセスに対する観察が足りないのである。

 業績を適切にマネジメントするためには、最終結果に至るプロセスを明らかにし、各プロセスの中間成果を測定する指標(KPI:Key Performance Indicator)を設定する必要がある。法人営業のプロセスが解りやすいので例にとると、

 見込み顧客へのコンタクト
⇒アポイント設定
⇒訪問
⇒商談
⇒見積提示
⇒クロージング
⇒成約(最終目標) というのが一般的なプロセスである。

 まずは、各プロセスの「量」をKPIとして設定することができる。つまり、

・見込み顧客へのコンタクト数
・アポイント設定数
・訪問数
・商談数
・見積提示数
・クロージング数 である(成約数は最終目標=KGI:Key Goal Indicatorにあたる)。

 次に、これらの値を基に、各プロセスの進捗「率」もKPIとして設定できる。具体的には、

・アポイント化率(=アポイント設定数÷見込み顧客へのコンタクト数)
・訪問成功率(=訪問数÷アポイント設定数)
・商談化率(=商談数÷訪問数)
・見積提示到達率(=見積提示数÷商談数)
・クロージング率(=クロージング数÷見積提示数)
・成約率(=成約数÷クロージング数) となる。

 これら複数のKPIを随時モニタリングしていると、営業活動のどこに問題があるのかが見えてきて、改善策を考えやすくなる。例えば、商談化率が芳しくない場合、営業担当者が顧客のニーズをきちんと捉えられていないのかもしれないし、営業担当者が提案書を書くのに時間をかけすぎて競合他社に遅れをとっているのかもしれない。あるいは、営業担当者が顧客に見せる販促ツール(プロトタイプや他社事例など)が十分でない可能性もある。この場合は営業部門の問題ではなく、マーケティング部門の問題になる。

 商談化率は一見低く感じるが、業界の特色として競合他社も似たような傾向にあるとすれば、商談を増やすための方法は、分母にあたるアポイント設定数、さらに遡って見込み顧客へのコンタクト数を増やすことしかない。このように、プロセス指標が見える化されていると、問題の早期発見と早期解決が可能になる。スコアボードを見ながら野球ができるのである。

 ちなみに、Webマーケティングの場合のKPIと改善策の一例は、以前書いた「ウェブに続く営業活動も見据えたプロセスを設計しよう−『ウェブ営業力』」という記事に少し載せてあるので、そちらもご参考に。

 最終成果と因果関係のある指標を並べていくと、KPIの体系ができあがる。こうしたKPI体系に基づく経営手法を「コックピット経営」と呼ぶそうだ。パイロットがコックピットで様々な数値を見ながら飛行機を操縦するように、経営者は様々なKPIをチェックしながら企業の舵取りを行うという訳だ。

 今はどうなっているか解らないが、デルの日本法人は徹底したコックピット経営を行っていたらしい。日本法人の社長が就任当時、システム上に羅列された数多くのデータを目にして、「まさにコックピットに座っているみたいだ」と感じたという話を聞いたことがある(人づての情報で恐縮…)。
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