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   新ブログ 谷藤友彦ー本と飯と中小企業診断士
March 24, 2010

日本が生き残る道は世界に向けた「技術と文化の発信」ではないか?

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 今日はDHBR2010年4月号の「イノベーションの新世界地図」(ジョン・カオ)という論文に絡めて記事を1本。この論文は、各国のイノベーションの特徴を4タイプにまとめたものである。一応、論文中では4タイプになっているが、もっと単純化すれば、「規模を活かす」か「集中する」かの2つになると思われる。

 「規模を活かす」パターンの代表が中国とインドである。両国は安い労働力を大量に投入すれば、あらゆる分野でイノベーションが起こる可能性を秘めている。一方、「集中する」パターンは、文字通りイノベーションを狙う分野を絞り込む。例えば、シンガポールは生命科学、環境技術、デジタル・メディアに、フィンランドはユニバーサル・デザインや医療技術、食品に、デンマークは無線技術、精密製造などに特化している。また、論文にはないが、ドバイは海と陸に巨大なインフラを建設することで、今や世界中の人と物が行き交う拠点と化している。
 
 ただし、「規模を活かす」パターンは巨大国家の戦略であり、「集中する」パターンは人口が数百万単位の小国家の戦略である。そう考えると、人口が減少しているとはいえ、依然として1億前後の人口を持つ日本は、非常に中途半端な立ち居地にあると言わざるを得ない。

 論文の著者が所属するインスティテュート・フォー・ラージ・スケール・イノベーションという団体が、各国の高卒以上の学歴保有者数、取得特許件数、世界銀行のデータなどに基づいて独自に作成したイノベーションラインキングでは、日本が6位に食い込んでいる(上位5カ国はアメリカ、フィンランド、イスラエル、イギリス、シンガポール。独自のデータゆえに、各データをどうやってランキング化したのかよく解らないのがちょっと痛い…)。ところが、悲しいかな論文中では日本について一切触れられていない。

 昨年12月に「新成長戦略(基本方針)〜輝きのある日本へ〜」が閣議決定され、今後の成長分野が大まかなに示された。基本方針の中では、「日本の強みを活かした成長」として「環境・エネルギー」と「健康(医療・介護)」が、「フロンティアの開拓による成長」として、「アジア(APEC自由貿易圏(FTAAP)の構築など)」と「観光・地域活性化」が謳われている。
http://www.meti.go.jp/topic/data/growth_strategy/091230.html
http://www.meti.go.jp/topic/data/growth_strategy/pdf/091230_2.pdf

 基本方針だから本当に核となる分野しか載せていないのかもしれないが、日本は小国家ではないのだから、あまり分野を絞り込みすぎると逆にイノベーションの芽が摘まれるような気がする。幸い、日本には他にも優れた技術がたくさんあると思う。世界有数の地震大国で培われた建築技術や、高品質の農作物を生産する農作技術、新幹線に代表される鉄道インフラの技術など、それなりの数を列挙することができる。日本人は、政府の政策如何に関わらず、優れた技術があればどんどん積極的に世界に持っていった方が賢明なのかもしれない。

 一般的に人、モノ、カネ、知識の4つが経営資源とされるが、日本は人口が減少傾向にあり、これといった資源もない。カネも貯蓄レベルで見れば相当規模の個人資産と海外投資があるとはいえ、国の財政赤字がとんでもない額に膨れ上がっているので、差し引きすればあるともないとも言えない状況である。となれば、あとは知識しかない。優れた知識を移転可能な技術へと転化し世界中に展開することで、需要を生み出す。それが、21世紀の日本の成長を支えるのではないだろうか?

 あと1つ、日本が世界に発信できるものに「文化」があると思う。日本の伝統的な美術品や工芸品、芸能もさることながら、アニメやマンガのような現代文化も海外では高く評価されている。文化はカネにならないと思われがちだが、アメリカはハリウッド文化を世界に発信し、産業として成り立つことを証明した。建国からわずか250年足らずの国の文化が世界で評価されるのならば、その何倍も長い歴史の中で蓄積された文化だって、もっと世界で評価されていいはずだと思う。

 だが、日本の文化の中で産業と呼べるレベルに達しているものはごくわずかであろう。アニメやマンガ業界で働く人の待遇が著しく低いことはよく知られているし、伝統文化に至っては国の補助金がなければやっていけないものも少なくない。文化を産業として成り立たせる術を確立することも、これからの日本には必要であろう。文化はカネにならないと言ったって、カネがなければ文化を維持・発展させることはできないのである。
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