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   新ブログ 谷藤友彦ー本と飯と中小企業診断士
December 13, 2009

研修業界はまだまだ未熟な業界かもしれない

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 日本能率協会が毎年実施している「当面する企業経営課題に関する調査」というものがあるのだが、直近3年の調査を振り返ってみると、いずれも「人材育成」が重要課題として位置づけられている。ということは、我々のような研修ベンダーの存在意義がこれからますます高まっていくのかもしれないなーと淡い期待を寄せてみたりして。

2009年度(第31回)当面する企業経営課題に関する調査結果の発表
2008年度(第30回)当面する企業経営課題に関する調査結果の発表
2007年度(第29回)当面する企業経営課題に関する調査結果の発表

 企業向けの研修サービスの市場規模は、矢野経済研究所の調査結果によるとだいたい5,000億円台だそうだ。一つ面白いデータを紹介すると、実は国内のゲーム市場(ハード/ソフト合計)も5,000億円〜6,000億円台である。もちろん、海外にも積極展開しているBtoCのゲーム産業と、基本的には国内市場で閉じているBtoBの研修サービス産業を市場規模だけで比較するのは乱暴だと思うが、数々のヒット商品を生み出している(中にはクソゲーもあるのは承知済み)ゲーム産業と比べると、研修サービス産業はあまりに存在感が薄いと言わざるを得ない。そういえば、昔ある飲み会で「よく売れている研修って何ですか?」と聞かれて答えに窮したことがある。

教育産業市場に関する調査結果2009
2008年国内ゲーム市場規模は約5826億1000万円(エンターブレイン調べ)

 そんなことを考えているうちに、私の中で「研修業界自体がまだまだ未熟な業界なのではないか?」という疑念を抱くようになった。それには3つの理由がある。

 第一に、研修での学習内容を適切にデザインするノウハウが少ない。学術的には「インストラクショナルデザイン」といって、学習目標をどのように設定するか、また、学習目標を達成するために研修の中身や運営方法をどのようにするかについて研究する分野がある。しかし、おそらくこの分野に精通している研修会社は限りなく少ない。だから、研修会社や講師自身が運営しやすいように講義の時間を定め、グループワークの方法を決めてしまう。そこには、受講者のタイプやスキルレベルを考慮し、学習効果を最大限に高めるためにはどうすればよいか、という視点が抜けてしまっている。そんな具合だと、「ある無人島漂流の物語」のように、受講者に一体何を学習させたいのかが全く解らない研修内容が生まれてしまうことがある。

 第二に、講師の育成ガイドラインが未整備であることが多い。クライアント企業の多くは、やはり講師の力量を重視する。だが、肝心の講師育成を体系的・組織的に行っている研修会社は、大手の研修会社ぐらいに限定されるのではないだろうか?「人に教えるスキル」というのは非常に曖昧で属人的なものであるせいか、ややもすると講師任せになってしまう。だから、講師の当たり外れは結構大きいという実態がある。その講師が当たりかどうかは研修を受けてみるまで解らないというのでは、クライアント企業も困ってしまう。

 第三の理由として、これが最も致命的だと思うのが、クライアント企業が抱えている人材育成の課題を考慮せず、既製カリキュラムを押しつける研修会社が少なからず存在するということである。クライアントの課題は、当然のことながらクライアントによって微妙に異なる。しかし、あれこれと人事担当者にヒアリングしておきながら、最終的には過去の提案書を使い回して、カスタマイズができない既製商品を提案する、などというケースが見られる(お勧めの研修会社 - 教えて!goo)。

 しかも、似たような研修を作っている会社も多いため、複数のベンダーに研修の提案をお願いしたら、提示された研修カリキュラムがどれも全く一緒だったという笑うに笑えない話もあるくらいだ。そこで無理やり差別化しようとすると、第一の理由で挙げたような訳の解らない演習問題を作って奇をてらうような方向に走ってしまう。

 これらの背後にある業界の構造的要因として、研修業界は参入障壁が異常なまでに低く、小規模の会社が無数に集まっているという点が挙げられると思う。研修会社は売上が100億円を超えれば大企業であり、大部分は売上が数億から数十億の会社である。無数の企業が似たような研修コンテンツを開発しているのだから、これは非常に非効率である(そして、その非効率さは研修価格に反映されて顧客に転嫁される)。また、研修カリキュラム設計や講師育成などに関するナレッジも分散してしまい、重要な知見がいつまでたっても蓄積されない。

 じゃあどうするんだ?と言われても、これといった解決策が今すぐに思いつくわけでもないし、生意気なことを言うんじゃねーというお叱りの言葉も聞こえてきそうだが、ただ確かに言えることは、どの研修会社も今まで通りのやり方では、高まる人材育成のニーズに応えることが年々難しくなっていくのではないかということである。
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コメント

研修業界の動向を検索してて辿り着きました。

ホントおっしゃる通りだと思います。

講師を育成する仕組みは、うちも課題になってますし、真のクライアントニーズに即した設計と運用って、簡単ではない。似たような課題を持つ業界内の人で集まって、一度こういう話でもしてみたいものですね〜。

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