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December 02, 2009

リーダーがメンバーの動機を「昇華」させるとはどういうことか?

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 「マネジメントとリーダーシップの違いを自分なりにまとめてみた」で、「リーダーはメンバーの個人的動機を『昇華』させる必要がある」と書いたが、やや抽象的な表現なのでもう少し具体的な説明を試みたいと思う。

 リーダーが新しい課題を掲げ、組織を変化させようとすると、それぞれのメンバーが持っている個人的な動機と衝突することがある。この場合、個人的動機のレベルで合意を図るのではなく、一段階上のレベル、すなわち「その課題の実行が組織全体にとって有益である」という社会性のレベルでベクトルを束ねる努力がリーダーには求められる。これをメンバーの個人的動機の「昇華」と呼んだわけだが、誤解のないように言っておくと、メンバーの個人的な動機を無視して正義を押しつければよいという話では決してない。

 むしろ、「この会社にとって必要だ」とか「社会的にも意義がある」といった大義名分が先行する議論は危ないこともある。トップが正当な理由を掲げていながら、実は裏にはやましい私的動機があったなどというのはよくある話だ。国民のため、公益のためといいながら、一部の団体が甘い汁を吸っている利権の構図だってちっともなくならない。

 それに、リーダーの課題はリーダー自身の価値観から発せられている(※冒頭のエントリーを参照)のに、メンバーの価値観は一切考慮されないという論理は間違いなく通らない。リーダーは自らの個人的な価値観を明らかにするとともに、メンバー個々人の価値観にも十分な配慮を配慮を払わなければならない。

 阪神タイガースに来季から加入することになった城島選手のことを取り上げてみよう。阪神はかつての暗黒時代を抜けて優勝争いができるチームになったが(今年はダメだったが…)、レギュラー陣の世代交代が進まず、チーム力の低下という問題を抱えている。特に、育成に時間がかかると言われるキャッチャーは、ベテランの矢野選手の後継者問題が深刻だ。今年は若い狩野選手が大幅に出場機会を増やしたものの、それでも全体として見ればやはり「チームの若返りを図りながら、常勝チームを作る」というのが喫緊の課題であった。

 そこで導入されたのが、マリナーズを退団した「城島選手の獲得」というソリューションである。 「マネジメントとリーダーシップの違いを自分なりにまとめてみた」での言葉を使えば、「資源の『新結合』」に当たる。年齢も若く、キャッチャーとしての実績も申し分ない上に、打撃センスにも優れている。ならばこれで一件落着かというと、そんなに甘い話ではない。

 キャッチャーはピッチャーとの信頼関係が重要であり、ピッチャーとの相性がモノをいうポジションでもある。スポーツニュースをいろいろと読んでみると、今年二桁勝利を挙げてブレイクした能見選手は、狩野選手のおかげでこの成績が残せたと発言しているし、ベテランの下柳選手や守護神の藤川選手も矢野選手とのバッテリーを望んでいる。しかし、城島選手は全試合に出場したいときっぱり言い切っているから、もし城島選手の言う通りになれば、せっかく今年スタメンの座をつかみかけた狩野選手は成長のチャンスを失い、これまで虎の正捕手の座を守り続け、多くのピッチャーから厚い信頼を得ている矢野選手も出場機会が大幅に減るだろう。

 選手はみなそれぞれ個人的な動機を持っており、このまま放置したら間違いなくチームは崩壊する。この状態を打破するのは、リーダーである真弓監督しかいない。能見選手が投げる試合は狩野選手で、下柳選手と藤川選手が投げる時は矢野選手で、それ以外は城島選手で、などのような切った貼ったの解決策では何の前進もない。真弓監督自身は阪神というチームをどうしたいと思っているのか。そして、各選手の個人的な思いを尊重しつつも、常勝チーム構築という共通の目的に向かって各選手に何を期待するのかについて、改めて選手と対話することが求められている(そして、実際にやっているはずだ)。

 選手全員の個人的動機が全て満たされることはありえない。何かしら諦めなければならない動機はある。逆に、新たに提示されたチーム像を前に、これまでとは違う役割を認識し、今までとは別の動機を抱くようになるかもしれない。メンバーがそれぞれ個人的動機を多かれ少なかれ変容させつつ、再び組織の目的のために貢献しようと思える状態にすること、これが「個人的動機の『昇華』」の意味するところである。
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