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November 04, 2009

<布教>という時代は終わりました−『感じるマネジメント』

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リクルートHCソリューショングループ
英治出版
2007-04-20
おすすめ平均:
意味・目的の共有化と共感によるマネジメント
つながり力
ビジョンをつくり浸透していくプロセスとして理想
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 組織内の価値観やビジョンの共有をテーマに「人と組織」のあり方を追求しているリクルート HCソリューショングループが、自動車部品メーカーのデンソーから投げかけられた1つの問い−「世界30カ国、総勢10万人にのぼるデンソーの全社員で『価値観(デンソー・スピリット)』を共有するには、どうしたらいいか?」

 本書は、リクルートHCのメンバーがデンソーのスタッフと共に、「そもそも、理念を浸透させるとはどういうことか?」、「ビジョンとは何か?」、「価値観の共有には、何が必要なのか?」をめぐって3年間試行錯誤を続けた記録となっている。

 最初は海外企業を訪問し、ベストプラクティスを調査するところからスタートしている。ちなみに、同書では会社名が伏せられているこの事例
 その会社では、人事制度に理念が組み込まれており、従業員の評価が「業績」と「理念の実践」の二つの観点で行われている。また、マネジャー以上の層に対しては、理念の実践についての360度調査を毎年行っているという。つまり、課長であれば、部長、他の課長、そして部下から評価を受けるということである。
はGEのことと思われる。GEの評価制度については、デーブ・ウルリヒ他著の『GE式ワークアウト』で詳しく紹介されている。

 が、これだけには飽き足らず、古くから伝わる物語や、マーティン・ルーサー・キングJr.など優れたリーダーたちの「共感を得る技術」を分析し、果ては宗教にもヒントを求めてキリスト教の教会や大学の神学部に取材に行くという型破りなプロジェクトになっている。「<布教>という時代は終わりました」とは、上智大学神学部の山岡三治学部長の言葉である。
 布教というパラダイム−伝道者が上に立ち、下にいる人々に教えを授けるという構図が、成り立たなくなったという意味だ。

「教えるのではなく、共に学ぶのです。キリスト教文化の馴染みのない土地に住む、キリストの名前や教えをまったく聞いたことがない人々でも、神の存在や、何かしら本質的なものへの畏怖心や信仰は、持っているに違いありません。<相手の心の中にある宝物>を相手と一緒に見つけながら、共に豊かになること。伝道者の役割とは、そういうことです」
 われわれはよく「ビジョンが浸透しない」という表現を使うが、「浸透」という単語には組織の上層部でまず誰かがビジョンを作り、ヒエラルキーの階層を1つずつ下りながら末端の社員にまで教えを広げるというニュアンスが感じられる。だが、これは間違った理解だということになる。

 パンフレットや社内報などに載っているビジョンは所詮「要約」に過ぎない。自社の行動規範や目指すべき姿に関する基本的なラインを示しているだけであって、ビジョンの全てではない。だから、紙に書かれた内容を逐一社員に覚えさせることは、ビジョンの共有とは言えない。

 そうではなく、社員一人一人が日々の業務の中で、「今、自分がとっているこの行動はわが社らしい、あるいはわが社らしくない」とか、「この仕事をしていると、わが社の将来的な目標に近づいている気がする、あるいは将来的な目標から逸れている気がする」といった具合に、個別具体的な場面において深く「感じる」ことができて初めて、ビジョンが共有できていると言えるのだろう。その意味では、ビジョンの共有とは言語的というよりも身体的である。

 ここでポイントが2つある。まず第一に、一人一人が携わっている仕事は違うし、それぞれちょっとずつ違う価値観を持っているから、全員が同じようにビジョンの中身を認識することは「ありえない」(「共有」という表現を使っておきながら、実は社員同士が所有しているビジョンは同じものではないというのは、やや矛盾した話に聞こえるかもしれないが…)。だが、一人一人が認識している内容は違えど、皆が「深い次元でビジョンを認識しようとしている」という共通の行為が、社員の間に「共同体意識」を芽生えさせる。これこそが、ビジョンの共有を意味あるものにしていると思う。

 もう1つは、当たり前だがビジョンの共有に「終わりはない」。ビジョンは事業環境の変化と対峙し、毎日の実践の中で社員に試される。また、他の社員が自分とは異なるビジョンの認識を持っていることを知ると、自省のきっかけとなる。たとえ社内資料の中で用いられている文言や図は一定期間変わらないとしても、その意味するところは少しずつ変わっていくのである。そうしたビジョンを共有するとはつまり、組織の構成員がビジョンの意味について認識と修正を繰り返す永遠の学習と言える。

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