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   新ブログ 谷藤友彦ー本と飯と中小企業診断士
October 05, 2009

プロモーションで大事なのは「1回のインパクト」より「継続性」

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 先日、不動産会社で経営企画をしている知人と久しぶりに飲んだ時に、プロモーションの話題になった。知人の会社には年間約3億円の広告予算があり、年間で8回新聞広告を出している。その度に100件程度の資料請求があり、必ず数件の受注に繋がっているという。この8回という数字にかなりこだわりがあるようで、知人は、「広告は出し続けることに意味があるんだよ」と、しきりに主張していた。

 広告、特に新聞や雑誌といったマスメディアレベルの広告になると、1回の単価が非常に高くなるため、単価に見合った効果を出そうとインパクトの強い広告を制作することばかりに気を取られてしまう。だが、どんなに強烈な広告を1回作ったとしても、受け手にとっては毎日受信する大量の情報のうちの一部でしかない。時間が経てば忘れてしまう。だから、ターゲットとなる顧客が自社のことを忘れないように、折に触れて自社のことを思い出すことができるように、継続的に露出することが大切だというのである。これは確かにもっともな考えだ。

 昨年末に書いた「今年印象に残った本ベスト10(第1位→第5位)」という記事の中で、経営学者エイドリアン・スライウォツキーの著書『ザ・プロフィット』を紹介したが、その中に「広告費と売上の関係」について言及している部分があるのを思い出した。

 この本では、デルモアという架空の会社で様々な事業戦略の立案に携わるスティーブという40歳ぐらいの男が、戦略を極めたチャオという老齢の人物から戦略論の講義を受けるという設定で、様々な経営戦略がストーリー仕立てで紹介されている。

エイドリアン・J・スライウォツキー
ダイヤモンド社
2002-12-14
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仕組みを作る
一気読み禁止
ビジネスモデルを考える気付きになる
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 (チャオはスティーブにこう言った。)「デビッド・オグルビー(※)は、景気後退期に広告費を手控えた企業と、それまでと同じ広告費を投じ続けた企業を比べ、売上と利益にどんな影響があったかを調べたんだ。すると、景気後退期にも広告費を絞らなかった企業は手控えた企業に比べて、景気回復後の売上増も利益増も早かったことが分かった。なぜこういう結果になると思う?」

 スティーブはよく考えてみた。「累積的な影響でしょうか?」

 「その通りだ。実に簡単なことだと思わないか?」

 「つまり、ブランド利益はある意味で積み上げた時間の賜物ということになりますね」

 「そう。正確には、効果的な宣伝活動に投じられた資金の累積額だ。だが、積み上げた時間という言い方も非常に近い」

(※)20世紀の3大広告人の1人。著書に『ある広告人の告白』がある。
 チャオはさらに、「累積宣伝費と市場シェア」の間にも相関関係があるという自身の研究結果をスティーブに紹介している。

 ここで、「累積広告費と市場シェアはどちらが原因でどちらが結果なのか?」という疑問が出てくるのだが、これについてチャオは次のように述べている。「差別化されていない製品同士の場合、累積投資がシェアの拡大をもたらすということだ。…つまり長期的には、一貫した継続的な経費投入が勝利を呼ぶと言えるわけだ」

 私のいる会社は知人の会社に比べるとはるかに規模が小さいので、さすがにウン億円もの資金をマスメディアの広告につぎ込むことはできない。しかし、チャオが最後に「積み上げた時間」という表現を使ったように、「時間」ならば小さなベンチャー企業でも投資することが可能だ。幸いにも、今ではブログなどを使えばほとんどコストをかけずにプロモーションを実施することができる。とにかく露出し続けること。媒体の違いこそあれ、やはりものをいうのは「1回のインパクト」ではなく「継続性」である。あの手この手でメッセージを発信し続けることによって、ターゲット顧客の中にブランド認知を構築していく。これこそがプロモーションの王道である。そんなことを思った。
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