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March 06, 2009

研修が成果につながるための職場の条件を整理してみた

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 「堅苦しい知識詰め込み型の研修よ、サラバ−『効果10倍の<教える>技術』」で触れた「研修で学んだことが職場で活かされない原因」をもう少し解りやすく整理できないかと考え、こんな図を描いてみた。

 学習内容が現場で実践されない要因は、大きく分けると3つだと思う。1つ目は「研修の中身」の問題で、現場の実情とかけ離れた内容であったり、実践的でない知識を教えていたりするというもの。2つ目は「受講者」の問題で、そもそも学習内容を活かす気がないとか、これまでの行動を変えることに抵抗を示すといった点が挙げられる。3つ目が「職場」の問題で、これが一番複雑だ。

 下の図で、学習効果に影響を与える職場の要因を整理してみた。以下、営業系の研修を例にしながらこの図を説明していきたいと思う。具体的には「組織営業の研修」を取り上げる。最近のBtoBビジネスでは、限られた国内市場のパイをめぐって価格競争を繰り広げていては泥沼にはまることが目に見えているため、顧客を選別して一部の重要顧客とはチームセリングによってリレーションを強化し、顧客の経営課題解決に直結する包括的なソリューションを提案して大きな商談を勝ち取り、収益性を高めようとする動きが見られる。その方法を研修で学習するケースを考える。

行動変容に影響を与える職場要因

 人の学習プロセスは、まず行動を変える意識を持つところからスタートする。そして、行動変容に必要な知識やスキルを身につけ、実際の行動に移していく。その結果として成果が現れる、という流れになっている。研修でカバーできるのはこのうち前半の2プロセスだけだが、職場要因は4つのプロセスそれぞれに影響を与える。

1.意識
 本人が行動変容を意識するためには、「なぜそのような行動変容が必要とされているのか」という理由が職場全体で認識されている必要がある。組織営業研修で言えば、過当な価格競争が自社の収益性を圧迫しており、他社と差別化された提案をしなければ勝ち残れないという背景があり、収益性と競争力の強化のために組織営業を新たに自社に導入するという目的が職場に浸透していなければならない。

 どんなに受講生が行動変容の意識を高く持ったところで、周囲の人間にその気がなければ本人の意識は萎える。逆に、職場全体が変革に対して強い意識を持っていれば、受講生も感化されて「自分も変わらなければならない」と思えてくる。

2.知識/スキル
 例えば、研修で「自分が担当する顧客の中から重要顧客を選別する方法」を学習したとしよう。研修では、過去の取引履歴、これまでのリレーション構築度合い、顧客が現在直面している経営課題、提案可能性のあるソリューションの規模といったいくつかの指標から重要顧客を絞り込む方法を学習した。もしこうした作業を現場で実行するならば、社内に必要な顧客情報が蓄積されており、また最新の顧客情報を外部から収集できる仕組みがあることが前提である。仮に、顧客情報が十分にデータベース化されておらず社内に散らばっていたり、各営業担当者が入手した最新の顧客情報をすばやく共有する仕組みがなかったりすると、せっかく研修で学習した方法が活かされない可能性が高まる。

 また、研修で「顧客に響く提案書の書き方」を学習したとする。自社の商品を説明する資料ではなく、顧客の課題を整理し、その課題と自社の商品を結びつける提案書の作成方法を研修では学んだ。しかし、研修で扱うのはせいぜいある特定の顧客を想定したケースにすぎず、すべての顧客にそのまま適用できる方法とは限らない。言い換えれば、顧客の課題の整理の仕方は顧客に応じてさまざまであり、現場の実情に合わせて学習した方法はカスタマイズされ、時に新たなナレッジが創造される。そうしたナレッジを営業担当者の間で共有する場があると学習は加速し、使える知恵が職場に蓄積されていく。ナレッジ共有の場は、研修で学んだ「形式知」を現場で使える「実践知」に転換する上で重要な役割を果たすと言える。

3.行動
 研修で学習したことが現場で実践できるように、業務プロセスや社員の権限・役割を適切に定義することも重要である。従来の営業は、各営業担当者が個人単位でスピーディーに動き回り、商談の数をこなすことが求められた。しかし、組織営業ではチーム単位で動くことが求められる。顧客内のネットワークを広げ、顧客の担当者以外にもインタビューを行いながら顧客の課題を深く理解し、社内に戻ってからはソリューションを提供する関係各部署と商談シナリオの打ち合わせを行って提案書を作成し、場合によっては上司などを巻き込みながら商談を展開する。これは従来とは全く違う業務プロセスである。

 また、各営業担当者が重要顧客と通常の顧客を掛け持ちするのか、重要顧客のみを担当する営業チームを別に作るのかによっても、プロセスは違ったものになる。さらに、チーム内の役割分担をどうするかによって、チームメンバー個人単位で見た役割や業務プロセスは変わってくる。こういった点を踏まえながら、研修の学習内容と、現場の仕事をうまくリンクさせなければならない。言われてみれば当たり前のことだが、通常は研修の企画と現場の仕事は担当部門が切り離されているため、連動を取るのは容易ではない。

 適切な業務プロセスを設計した上で、業務を効率的に回すためのツールを整備することも重要な条件である。組織営業で言えば、営業担当者が従来よりも幅広い商品を扱うことになるため、自社商品に関する情報をすぐに入手できる環境があるとありがたい。また、商談規模が大きくなると社内稟議も複雑になるため、ワークフローを管理するシステムなども必要になってくるだろう。

4.成果
 自分がどれだけ変わったかが目に見える方が、学習効果は高まる。そういう意味では、成果をモニタリングし、本人にフィードバックする仕組みは不可欠だ。ここでいう成果とは、業績=最終成果よりも、もっとプロセスに踏み込んだ成果の方がよい。最終成果だけの評価だと、どうやって業績につながったのかが解りづらい。プロセスが見えれば、どこがよくてどこが悪かったのか分析することが可能になる。

 プロセスを評価する指標には、行動指標と中間成果指標の2つがある。前者は求められる行動をどれだけ取ったかという指標であり、後者は業績とイコールではないが、業績の向上と関係の深い指標のことである。組織営業で言えば、行動指標は「顧客内人脈を広げるための行動(関係する他部門の人を紹介してもらうなど)を取ったか」、「顧客の経営課題に関する資料の提供を顧客に依頼したか」、「社内で商談ストーリーを検討する会議を行ったか」といったものになる。中間成果指標は、「顧客内人脈の人数(同一顧客内で名刺交換をした人の数など)」、「顧客から受領できた重要資料の数」、「提案内容に対する顧客の満足度」などが考えられる。いずれも定量的に表せる方が解りやすい。

 そして、こうした評価指標が人事評価そのものに組み込まれているのがベストである。人は、評価されない行動はやらないものである。どんなに職場を挙げて中長期的な視点に立った組織営業を実践しようとしても、肝心の評価制度が従来通りの短期的な売上重視だとしたら、誰もやる気を起こさない。

5.全体を通じて
 全プロセスに共通して言えるのは、「上司や同僚のサポート」の有無が影響するということだ。特に上司の影響力は大きい。行動変容の必要性を部下に説明し、部下が学習内容を活かせる仕事を用意し、必要に応じて新しいやり方についてのアドバイスを提供し、定期的に成果を客観的な視点から評価する。上司の行動が部下の学習効果を左右するのは言うまでもない。

 学習に影響を与える職場要因は多岐にわたる。研修の中身を考えるのと同時に、これまで見てきたような職場要因の整備も行うことが学習効果を最大化する大きなカギであると思う。問題は、人事部や人材開発部がどこまでの責任を負うのかということだ。これはまだまだ議論が必要なポイントである。

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