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November 21, 2008

飽きっぽい社長には気をつけろ−『バカ社長論』

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バカ社長論 (日経プレミアシリーズ 5) (日経プレミアシリーズ 5)
山田 咲道
日本経済新聞出版社
2008-05-09
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 この記事はずっと下書き状態になっていたのだが、下書きの日を見たら7月24日になっていた。4ヶ月も放ったらかしにしていた自分って…

 会計事務所を経営する公認会計士の著者が、自らの体験も踏まえながら企業経営のコツを書いた本。どちらかというと中小企業向け。社長の心構え、お金の使い方、人材育成の方針といった割とオーソドックスな内容が中心だが、企業経営のイロハを振り返るにはいい1冊かもしれない。私が務めている会社もまだまだ小さな会社なので、「バカ社長」の思考が蔓延しないように注意しないといけないなとも思った。

売れ行きが好調なうちに次の製品を開発する
 「『いやあ苦節10年、ついにヒット商品を出せたなあ。これでうちの会社もしばらくは安泰だ。みんな、ありがとう。』と慢心し、遊び呆けてしまう社長がいます。現在売れているからといって、いつまで売れているかは誰もわかりません。

 大ヒット商品が出たことによって、会社がぬるま湯体質になり、その後に業績を落とすという例が目につきます。

 優秀な社長であれば、いま安定して売れる商品、伸びている商品があったとしても、時代が動いていることを察知して、新たな商品開発を念頭に置いているのです。」
 どんな製品であってもライフサイクルがあるのだから、いつかは売れなくなる時代が来る。売れなくなった時に備えて、次の一手をあらかじめ考えておかなければいけない。至極当たり前のことだ。だが、製品が一番売れている時というのは、一番利益が出ている時でもある。お客様からの引合は絶えない。営業やマーケティングにそれほど経費を使わなくてもどんどん売れる。利益の大きさが社長の目をくらませる。「今が一番儲かるのだから、営業を強化してジャンジャン売ろう」と考えるのか、「今の利益を元手にして、新しい製品の開発に着手しよう」と考えるのか、ここが大きな分かれ目となる。

 このくだりを読んでいて、島田紳助さんの芸人論を思い出した。生き残る芸人と一発屋で終わる芸人の違い、それは「今の芸がウケているうちに次の芸を考えられるか否かだ」と紳助さんは語っている。

利益の方程式を考えておく
 会社は利益を出さなければ生き残っていけない。赤字になると会社の資本金が食いつぶされ、やがて倒産へと追いやられる。中小企業はもともとカネが少ないのだから、赤字を出そうものならすぐにでも経営が危うくなる。だからこそ、「わが社はどうやって利益を出すのか」という利益の方程式を持っておくことが大事だ。コストを正しく見積もり、そのコストが十分回収できる価格を設定する必要がある。

 この本の著者は、価格設定には3通りの考え方があるという。一番ダメな社長は売上原価しかコストとして見えていない。「原価が50万円だから、価格は100万円にしよう。そうすると利益は50万円だな。まあ、これで経費も十分吸収できるだろう」などと考える。これはあまりにアバウトな考え方だ。

 次にダメな社長は売上原価と経費から価格を設定する。「原価が50万円、経費が30万円だから、価格は100万円にしよう。そうすると利益は20万円、利益率は20%だな」などと考える。だが、予想外に売上が伸びなかったとか、予想外に経費がかかったといった不測の事態が起こると赤字に転落する。

 賢い社長はリスクファクターを見込んでおく。つまり、余計にコストがかかることをあらかじめ想定して、価格に織り込んでおくのだ。「原価が50万円、経費が30万円、リスクファクターとして20万円を見込んでおこう。」この時、価格はリスクファクターを上乗せした120万円となる。リスクファクターの分だけコストが余計にかかったとしても20万円の利益が確保できるし、リスクが顕在化しなければ当初よりも多くの利益が出ることになる。リスクファクターを上乗せして価格増となった分については、それだけの価値があると思わせる品質を製品の中に作りこめばいい。
 「売上、直接原価(仕入)だけではなく、経費がいくらかかるか、それに対して利益はいくらとれるか、さらに『リスクファクター』は、どのくらいあるのか−それに対応して、価格に上乗せをしなければ、利益は出すことができないのです。」
 最初に書いた「一番ダメな社長」みたいな人は本当にいるのか?と思われるかもしれないが、次の2つの質問に答えられるか試してみるといいだろう。「その商品の売上原価はいくらですか?」、「では、その商品を1つ売ると、営業利益はいくら出るのですか?」前者に答えられても、後者に答えられない人は結構多いはずだ。

 原価の見積は比較的容易である。製造業であれば原価計算が発達しているし、卸売業の場合は仕入価格が原価になる。しかし、経費の計算方法というのは意外と発達していない。経費の総額は解っても、製品1個当たりといったレベルになるとお手上げだったりする。経費の計算が大雑把なために、過剰な営業活動をしたり、採算度外視のアフターサービスをしたり、自分で自分の首を絞めるような値引きをしたりしてしまう。そして、大事な会社の利益が食いつぶされていく。

 私の知り合いが勤めているある不動産業の会社は、経費の計算を「マニアックなまでに」やっていると聞いた。案件単位で営業利益を細かくシミュレーションする仕組みができあがっている。そして、一定の利益率達成のために経費を一定範囲内に抑えるべく、「営業は地方に○○回以上営業してはならない」といったさまざまなルールが定められているという。

経営資源の投資量には「クリティカルマス」がある
 先ほど、売れ行きが好調なうちに次の製品開発をすると書いたが、だからといってあれもこれもと手を出す社長では困る。飽きっぽく、移り気が激しい社長には気をつけなければならない。
 「目の前の仕事がきちんとできない社長は、大きな話ばかりして、こっちもあっちも手を出します。目的もなしに、無謀なビジネスに手を出すのではなく、いまのビジネスをひたすら深掘りする。一つの分野の深掘りは、利益の源泉になっていきます。」
 会社はヒト、モノ、カネ、情報といったあらゆる経営資源を投資して、そこからリターン=利益を得る。この経営資源を一定期間のうちにどれだけ投入するかが事業の成否を握る大きなポイントになる。
クリティカルマス

 株式などの投資と事業における投資の違いをイメージ図としてまとめてみた。株式の場合、一定期間の間にいくら投資しようとリターン率は変わらない。ソニーに100万円投資した場合はリターン率が3%だが、100億円一気に投資したらリターン率が15%に跳ね上がる、などということはない。同一の投資対象に限っていえば、ある期間におけるリターン率は一定だ。ただ、投資対象によってリターン率が異なり、物によってはマイナスのリターンになる、つまりリスクを抱えている場合がある。そこで、リスクを最小化するために、複数の株式に分散投資をするのがよいと言われる。

 ところが、事業の場合はこれとは異なる。一定期間内に投入する経営資源の量によって、リターン率が大きく変化する。しかも、ある量を境目にリターン率が大きく跳ね上がるのだ。この瞬間の資源投入量をクリティカルマスという。大企業の例になってしまうが、ウォルマートは創業10年目ぐらいまでは数店舗しかない小さな会社だったものの、ある時期から大規模な新規出店を行い、納入業者を巻き込んだ大掛かりな情報システムに投資をし続けたことで、高収益をたたき出す大企業へと変貌した。日本でも銀行業への異業種参入が相次いだ時期に、多くの企業が利益を出せずにいた中でセブン銀行だけが早くから黒字化に成功したのは、事業開始の数年間の間に既存のイトーヨーカ堂やセブンイレブンの店舗網を活用して大掛かりなATM設置を行い、顧客の利便性をぐっと高めたことが一因とも考えられる。事業の場合は株式投資と異なり、一定の集中投資が必要になるのだ。

 飽きっぽい社長はそこが理解できていない。ある事業にちょこっと投資しては次の事業に目をつける。クリティカルマスに達しないまま、次の投資を始めてしまう。これではいつまでたっても収益が向上しない。それどころか、お互いに赤字を出して資源を食いつぶしあうなんて事態にもなりかねない。「ここから○○年間は投資をする期間だ」という具合に投資期間を正しく設定し、クリティカルマスを適切に見極め、集中してその分野を深掘りすることが社長の大事な仕事である。

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