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July 03, 2006

【ミニ書評】『ドイツ 株主価値経営のジレンマ(DHBR2006年7月号)』

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Harvard Business Review (ハーバード・ビジネス・レビュー) 2006年 07月号 [雑誌]Harvard Business Review (ハーバード・ビジネス・レビュー) 2006年 07月号 [雑誌]

ダイヤモンド社 2006-06-09

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《収録されている主な論文》
 ワールドカップにあわせてハーバード・ビジネス・レビューまでもドイツ特集。

 「戦略テーマ」:BSCの新ツール(ロバート・S・キャプラン、デイビッド・P・ノートン)
 「財務」「顧客」「社内プロセス」「学習と成長」という4つの視点から価値創造の方法を探るバランス・スコア・カード(BSC)は、これまで事業部門の業績改善のために用いられてきた。しかし近年、BSCを全社戦略にも応用し、企業価値の増大に努める動きが見られる。全社戦略の場合、BSCに「戦略マップ」という新しいツールが加わる。

 とはいうものの、この「戦略マップ」、論文を読んでも正直よく解らない(汗)。「全社的に重要な複数の戦略的テーマ」ぐらいの意味で使われているようにしか思えず、「戦略マップ」を用いると部門間の利害関係を超えて全社的なシナジーが発揮できるとするキャプランらの主張はやや理解しがたい。

 共同決定方式の岐路(コーネリア・ガイスラー他)
 ドイツと日本の経済や企業は非常によく似ていると言われる。製造業と輸出を中心に経済成長を遂げたこと、資金調達は間接金融が主で、銀行の影響力が大きいこと、企業は株主だけでなく(あるいはそれ以上に)従業員などのステークホルダーを重視することなど。意思決定の方式も例外ではない。日本の場合、多くの関係者を意思決定のプロセスに加え、時間をかけて決定を下す稟議制度が特徴的だが、ドイツでは従業員を企業の重要な意思決定に参加させる「共同決定方式」が法的に整備されている。

 ところが、ややもすると意思決定に時間がかかりすぎる稟議制度と同様、共同決定方式も企業の意思決定のスピードを損ねるとして、近年論争を呼び起こしている。経済効果の面からすると、共同決定方式が企業業績に対してプラスにはたらくという研究結果もあるそうだが、グローバル経済のスピーディーな競争に日々さらされている経営者は、そう簡単には納得してくれないようだ。

 社会システムをターンアラウンドせよ(ローランド・ベルガー)
 ドイツ出身のコンサルタントで、ローランド・ベルガー・ストラテジー・コンサルタンツ会長でもあるローランド・ベルガーのインタビュー記事。

 インタビューの要点は次の通り。「ホワイトカラーの生産性を高める必要がある」「規制緩和や民営化を恐れてはならない」「人口減少の問題に対処しなければならない」ローランド・ベルガーの名が伏せられていたら、ピーター・ドラッカーの生前のインタビュー記事と勘違いしてしまっていたかもしれない。

 ドイツの「隠れたチャンピオン」に学ぶ(ハーマン・サイモン、シュテファン・リッベルト、仲井間滋之)
 「隠れたチャンピオン」というのはハーマン・サイモンが1992年に発表したコンセプトで、参入している業界において50%を超えるシェアを持ち、グローバルな事業展開をし、高収益を誇るマーケット・リーダーであるにもかかわらず、一般的にあまり知られていない中小企業のことを指す。「隠れたチャンピオン」に共通するのは、(1)野心的な目標設定、(2)集中戦略、(3)高付加価値の提供、(4)慎重に計画されたグローバル化、(5)意欲の高い従業員の5点である。

 個人的な見解だが、「隠れたチャンピオン」が要求する条件の厳しさを考えると、この5つの要素だけでは到底足りないように思われる(紙面に限りがあるから仕方がないか?)。

 ドイツ、イノベーションの源流(坪井賢一)
 歴史的にみると、ドイツは初めから一つの国家だったわけではない。ドイツは多数の領邦国家から成る緩やかな連合体だった。歴史を経る中で領邦国家は整理され、その数は減少したが、それぞれの領邦国家が大学を創っていたこともあって、19世紀後半のドイツ・オーストリアには多数の大学が存在していた。これらの大学が学生の確保のためにしのぎを削って知識の質を高めた結果、19世紀後半から20世紀初頭のドイツ・オーストリアはイノベーションの王国になったという。

 つまり、ドイツでは大学の激しい競争がイノベーションの原動力になったということになる。もしこれが本当ならば、今後日本で予想される大学の生存競争が、新たなイノベーションを生み出すことになる。しかし、そうした事態はちょっと考えにくい。ドイツのイノベーションは、大学の競争激化も一つの要因だったかもしれないが、他にも重要な要素がたくさん絡んでいると考えた方がよさそうである。

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