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May 10, 2006

ピーターの法則を克服する

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 「ピーターの法則」とは、「階層社会学」の創始者であるローレンス・J・ピーターが発見した法則です。

(1)階層社会では、すべての人は昇進を重ね、おのおのの無能レベルに到達する。
(2)やがて、あらゆるポストは、職責を果たせない無能な人間によって占められる。
(3)仕事は、まだ無能レベルに達していない者によって行われている。
(ローレンス・J・ピーター、レイモンド・ハル著、渡辺伸也訳『ピーターの法則 創造的無能のすすめ』ダイヤモンド社、2003年)

 本当に「すべての人が」無能レベルに達してしまうのかどうかは詳細な検証を必要とするものの(「すべての人」というのは極端な話で、中には適切な階層にとどまり続けて高い成果を上げ続ける人もいる、というのが私の見解)、悲しいことに、かつて有能だったにもかかわらず、昇進後に全く仕事ができなくなる人が少なからず存在するのは事実です(私も何人か知っている)。

 ピーター・ドラッカーも、「ピーターの法則」という名称を知っていたかどうかは別として、組織においては無能レベルに達する人が多いことに気づいていました。ドラッカー自身、若い頃に無能レベルに達しそうになった経験があります。

 「私は1933年にドイツのフランクフルトを離れ、イギリスのロンドンに渡りました。そしてそこでは、はじめ、大手の保険会社で証券アナリストを務め、1年ほどしてから、中小ではありましたが、急速に成長しつつあった銀行に入りました。
 そこで私は、エコノミストとして、3人のシニア・パートナーの補佐役をつとめることになりました。シニア・パートナーのうち、1人は70代の創立者で、あとの2人は30代半ばの人でした。
 そして初めの頃は、私はこの若い2人のシニア・パートナーの補佐の仕事だけをやらされていました。
 ところが、銀行に入って3ヶ月ほどしたある日、年配の創立者の方のシニア・パートナーが、私を部屋に呼びつけました。そしてこう言いました。『君が入ってきたことは気にしていなかった。いまも気になどしていない。しかし君は、思っていたよりも、はるかに馬鹿のようだ。許されざる馬鹿だ』
 2人のシニア・パートナーに毎日のように褒められていた私は、あっけにとられてしまいました。
 その人は、『保険会社の証券アナリストとしてよくやっていたことは知っている。しかし、証券アナリストとしてやってもらうのなら、保険会社においておいた。いま君は、シニア・パートナーの補佐役だ。ところが君は、相も変わらず、証券アナリストのままでいる。いまの仕事で成果を上げるには、一体君は何をしなければならないと考えているのか』と言ったのです。
 私は相当頭に血が上りました。しかし、その人の言うことの方が正しいことは認めざるをえませんでした。」
(ピーター・ドラッカー、中内功著『創生の時』ダイヤモンド社、1995年)

 ドラッカーは、少なからぬ人が無能レベルに到達してしまう理由を次のように分析しています。

 「10年あるいは15年にわたって有能だった人たちが、なぜ急に無能になってしまうのでしょうか。
 私が見てきたかぎり、それらの例のすべてにおいて、原因は、昇進した人たちが、ちょうど私が60年前、あのロンドンの銀行に入ったばかりの頃していたことと、全く同じことをしていることにあります。
 彼らは、新しい任務において、前の任務で成功していたことと、彼らに昇進をもたらしてくれたことを行い続けているのです。
 そしてそのあげく、無能にしか仕事ができなくなってしまうのです。正確には、彼ら自身が無能になったからではなく、間違った仕事をしているために、無能な仕事ぶりになってしまうのです。」
(同上)

 ローレンス・J・ピーターは、無能レベルへの到達を回避する手法として、「創造的無能」すなわち、周囲から昇進の話を持ちかけられないように、自分が昇進を望んでおらず、すでに無能レベルに到達してしまっているように振舞うという方法を勧めています。しかし私は、この一種の諦めにも似た方法をどうも好きになれません。ローレンス・J・ピーターの問題提起は的確でしたが、問題解決はいまいちだったように思えます。

 他方、人間の能力は無限に向上させることができると信じていたドラッカーはこのような解決方法を提唱しません。ドラッカー自身は、次のようにして無能レベルに達することを回避してきました。

 「私は新しい仕事をやるようになるたびに、『新しい仕事で成果を上げるには、何をしなければならないか』を自問することにしています。そしてその答えは、そのたびに違ったものになっています。」
(同上)

 そして、ドラッカーが出会ったハイパフォーマーは、やはり同じような問いを提起し、答えを出していると述べています。「創造的無能」を発揮する前に、打つべき手はまだあるのです。
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