※2012年12月1日より新ブログに移行しました。よろしければこちらもご覧ください。
free to write WHATEVER I like
May 09, 2006

検察官が自白を録音・録画する

拍手してくれたら嬉しいな⇒
検事取り調べ録音・録画 調書の任意性立証に限定 裁判員制度導入で試行

 平成二十一年五月までに始まる裁判員制度を見すえ、法務・検察当局は九日、検察官による容疑者の取り調べの一部で、録音・録画(可視化)を試行導入することを決めた。東京地検のほか大阪地検でも実施する方向で検討している。導入により、「自白偏重の温床」ともいわれる密室での取り調べの改善につながることも期待される。これまで録音・録画に一切応じなかった捜査当局にとって重大な方針転換となる。

 試行は裁判員制度の対象事件のうち、起訴後の公判で被告人の供述調書の任意性が争点になると予想される場合に限る。一般国民から選ばれる裁判員に分かりやすく客観的に供述調書の任意性を立証することが狙い。現行の刑事裁判では、捜査段階の供述調書と、法廷での被告人質問に食い違いが生じると、調書の任意性が争点として浮上する。法廷では警察・検察による取り調べ・調書作成の過程で暴行や脅迫などがあったかどうかについて証人尋問が繰り返され、審理が不毛に長引くことがある。録音・録画の試行は、裁判員制度の対象事件の中でも「取り調べの機能を損なわない範囲内で相当と認められる部分」に限定。検察官は経験則などから、公判で被告人の供述調書の任意性が争われると予想される事件について適用する。警察の取り調べは対象外。
(5月9日産経新聞より抜粋)

 果たしてこの記事に書かれているような成果が期待できるかどうかはやや疑問です。それは、検察官自身が自白を録音・録画するかしないかを決定するからです。

 自白の任意性が争点となるのは、自白が検察官の暴行や脅迫などによって強要されたものである可能性がある場合です。しかし、被疑者に自白を強要したケースを録音・録画しようとする検察官はいません。いくら検察官が高潔だとしても、自分にとって不利になるようなことをわざわざするはずがないのです。よって、録音・録画される自白は、任意性が争われるべき自白ではなく、ほとんど任意性が問題にならないような自白ばかりになります。

 また、自白の任意性ではなく、録音・録画の任意性という新たな争点が発生する可能性があります。すなわち、被疑者に対して、録音・録画中は任意で自白しているように喋るよう、録音・録画の前に検察官が強要したか否かを争うということです。こうなるとほとんど泥仕合のような審理になってしまい、収拾がつきません。

 問題は、検察官自身が録音・録画の決定権を握っている点にあります。自白の任意性に関して、検察官はチェックを受ける立場にあります。にもかかわらず、チェックを行うのは検察官自身なのです。「外科医と患者は同一であってはならない」という言葉がありますが、自分で自分を治すことはできません(ブラックジャックは何度か自分で自分を手術したことがあるが、天才の腕ですら手術中はびくびくと震えていた。全ての検察官がブラックジャックのように天才であるとは到底考えられない)。

 真にチェック機能を働かせるならば、検察官以外の第三者が対象となる刑事事件、自白を録音・録画すべき取り調べの状況などを決めるべきです。その第三者としては、弁護士も適格ではありません。なぜならば、弁護側は審理をいたずらに長引かせたり、混乱させたりする目的で、過剰に自白の録音・録画を要求する可能性があるからです。また、起訴されていない事件について裁判所が口出しをすることはできないので、裁判官も不適格です。そうなると、最後はやはり法律がその役割を担うしかないように思えます。


《参考URL》
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20060509-00000090-kyodo-soci
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20060509-00000023-san-soci
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20060509-00000057-mai-pol

《追記》 この件についてもっと詳しい情報はないかと検察庁のHPを見てみたが、「お知らせ」のページに次長検事が短いコメントを書いているだけで詳細は解らず。今度は法務省のHPを覗いてみるものの、5月分の定例記者会見はアップされていない(5月9日時点)ため、やっぱり解らない。おまけに法務省のHPはサイト内検索ができず、検索ワードで調べられない。何と不便な…

おススメの書籍

トラックバックURL

このエントリーのトラックバックURL:

コメントする