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   新ブログ 谷藤友彦ー本と飯と中小企業診断士
April 10, 2006

ドラッカーによるイノベーションの「7つの機会」

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 ドラッカーは『イノベーションと起業家精神』の中で、イノベーションの機会には次の7つがあると述べています。

新訳 イノベーションと起業家精神〈上〉その原理と方法


(1)予期せぬことの生起。予期せぬ成功、予期せぬ失敗、予期せぬ出来事。
 最もリスクが少なく、最も容易にイノベーションの機会となるものだが、往々にして無視される。IBMは当初、科学計算用にコンピュータを作ったが、企業が給与計算などの世俗的な仕事にコンピュータを使い始めた。IBMにとっては予想外の出来事で戸惑いを感じずにはいられなかったが、すぐにこのニーズに応じた。

(2)ギャップの存在。現実にあるものと、かくあるべきものとのギャップ。
 ギャップには業績ギャップ、認識ギャップ、価値観ギャップ、プロセス・ギャップの4種類がある。

 a.業績ギャップ=製品やサービスに対する需要が順調に伸びているにもかかわらず業績が芳しくない場合。
 b.認識ギャップ=ある産業の内部にいる人たちがものごとを見誤り、現実について誤った認識を持っている場合。
 c.価値観ギャップ=生産者や供給者が提供していると思っている価値と、顧客が真に必要としている価値との間に違いが存在する場合。
 d.プロセス・ギャップ=何か1つの作業を行う一連のプロセスの中で、不安に感じたり困ったりする部分がある場合。

(3)ニーズの存在。
 漠然とした一般的なニーズではなく、具体的なニーズでなければならない。

 a.プロセス・ニーズ=プロセス・ギャップから生じるニーズ。
 b.労働力ニーズ=労働力不足の懸念から生じるニーズ。製造業においてロボットが半熟練労働に取って代わるようになったのは、労働力ニーズの圧力があったためである。
 c.知識ニーズ=新しい知識を必要とする場合。それらの新しい知識は開発研究によって生み出される。

(4)産業構造の変化。
 自動車産業がよい例である。第一の波は20世紀の初頭に訪れた。自動車はかつてのような金持ちの贅沢品ではなくなり、大衆に広まりつつあった。フォードの「Tフォード」はこの産業構造の変化を利用したものである。

 第二の波は1960年代から80年代にかけてやってきた。自動車メーカーはそれまでの自国市場独占型の戦略を捨て、グローバル戦略に切り替える必要があった。この動きに真っ先に乗じたのが日本の自動車メーカーであった。GMは日本のメーカーに後れを取ったものの、グローバル企業になる決意をした。クライスラーは完全に乗り遅れた。

(5)人口構造の変化。
 人口の増減や年齢構成、雇用や教育水準、所得などの人口構造の変化は明白である。人口構造の変化は突然訪れるものであるかのように認識されている。しかし、20年後に労働力人口に加わる人々は既に生まれている。人口構造の変化が生じるまでには、予測可能なリードタイムが存在する。

(6)認識の変化、すなわち、ものの見方、感じ方、考え方の変化。
 コップに「半分入っている」と捉えるか「半分空である」と捉えるかは全く違う。従って、取るべき行動も違う。かつて食事の仕方は所得階層によって決まっていた。一般人は質素な食事をし、金持ちは豪華な食事をした。しかし現在は、一般人が質素な食事もすれば豪華な食事もする。

(7)新しい知識の出現。
 一般にイノベーションと呼ばれるものである。起業家精神のスーパースターと言える。成功すれば有名になれるし、金持ちにもなれる。しかし、最も成功が難しいのもこのイノベーションである。

 知識によるイノベーションは、実を結ぶまでのリードタイムの長さ、失敗の確率、不確実性、付随する問題が他のイノベーションとは全く異なる。知識によるイノベーションのリードタイムはおおよそ30年である。

 (1)から(4)は、企業や社会的機関の組織の内部、あるいは産業や社会的部門の内部の事象であり、内部にいる人にはよく見えるものです。他方(5)から(7)は、企業や産業の外部における事象です。この7つの順番には意味があり、信頼性と確実性の大きい順に並んでいます。


《補足》 ちなみに『イノベーションと起業家精神』の下巻では、起業家精神を実現するためにどのようなマネジメントをするべきか、イノベーションを実現する戦略にはどのような種類があるか、という点について論説している。

 「イノベーションのための組織は既存組織と切り離し、人事制度や報酬制度は別途構築すべきだ」「買収すればイノベーションが容易になるとは限らない」といった主張は、クレイトン・クリステンセンのイノベーション理論にも影響を与えていると思われる。

「新訳」イノベーションと起業家精神〈下〉その原理と方法
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コメント

予期せぬことが先頭にくるところが面白いですね。とてもためになりました!!

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