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May 22, 2006

【ミニ書評】『顧客「再発見」のマーケティング手法(DHBR2006年6月号)』

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Harvard Business Review (ハーバード・ビジネス・レビュー) 2006年 06月号 [雑誌]Harvard Business Review (ハーバード・ビジネス・レビュー) 2006年 06月号 [雑誌]

ダイヤモンド社 2006-05-10

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《収録されている主な論文》
 いまこそマネジメント・イノベーションを(ゲイリー・ハメル)
 「イノベーション・マネジメント」ではなく、「マネジメント・イノベーション」、すなわち、マネジメントそのものに対してイノベーションの理論・方法を適用することをハメルは求めている。

 マネジメントは約1世紀の歴史を持ち、基本的な原則は出尽くしたかのようにも見える。とはいえ、まだ決着がついていない問題は依然として残っている(例えば、戦略はトップが強権を発動して実行するものなのか、従業員の参加によって実行するものなのか、など)。加えて、常識や通説を疑う姿勢を持てば、新たな発見が生まれる可能性は十分にあるとハメルは期待している。

 セグメンテーションという悪弊(クレイトン・M・クリステンセン、スコット・クック、タディ・ホール)
 デモグラフィックス(統計的要因)やサイコグラフィックス(心理的要因)に基づく従来のセグメンテーションには限界があることは、かねてから多くの専門家によって指摘されていた。クリステンセンも、マーケターが本当に注目すべきなのは、顧客が処理しなければならない仕事=「ジョブ」であると述べている。クリステンセンの主張は、半世紀近くも前にセオドア・レビットが述べた「消費者は1/4径のドリルを買いたいのではなく1/4径の穴が欲しいのだ」という言葉に集約される。

 この論文は、クリステンセンの著書『イノベーションへの解』の内容が基になっていると思われる。『イノベーションへの解』では「ジョブ」ではなく「アフォーダンス」という用語が用いられていた。論文中で紹介されている事例は、著書の中にも登場する。その点ではやや物足りない論文ではある。しかし、論文の後半で自動車業界(日産も標的にされている)のマーケティングを批判している部分は面白かった。クリステンセン自身も、自らの「ジョブ」を解決する自動車がなかなか見つからなくて失望したようだ。

 セグメンテーションの再発見(ダニエル・ヤンケロビッチ、デイビッド・ミーア)
 クリステンセンらはセグメンテーションの弊害を指摘したのに対し、ヤンケロビッチらは現在のセグメンテーションが本来の使われ方をしていない(せいぜいCMにどのタレントを起用するかを決めるために使われるに過ぎない)と述べている。

 既に60年代には、デモグラフィックスに基づくセグメンテーションに問題があることが知られていた(ヤンケロビッチは約40年前に、デモグラフィックスによるセグメンテーションを修正する手法を提唱した人物)。その後、心理学や社会学などの理論の助けもあって、サイコグラフィックスに基づくセグメンテーションが主流となった。ところが、ヤンケロビッチはその手法にも問題があるという。

 ただ、サイコグラフィックスに問題があるとしながら、例えば自動車のマーケティングに関して、「どのような車を選考するのかは、自分や周囲が思い描く自己イメージに大いに影響する以上、消費者の感情や価値観を調べる必要がある」と述べており、節々に消費者の価値観を重視する記述が見られる。この点でやや論理に難があるように思える。

 ダイアローグ・マーケティング(キルシ・カルヤナム、モンテ・ツィーベン)
 ダイアローグ・マーケティングとは、簡単に言えば、顧客に対して適切なタイミングで、適切な内容のメッセージを送信するマーケティングの手法である。最近ではCRM(Customer Relationship Management)のシステムも発達し、顧客に対して個別にプロモーションをすることも可能になっているため、取り立てて目新しい考え方ではないように思えた。

 いつ、だれに、何を売るかを知る方法(V・クマー、ラジクマー・ベンカテサン、ベルナー・ライナルツ)
 マーケターは「どの顧客に」「どの製品を」売るのかを懸命に予測しているが、「いつ」売るのかについてはあまり考えていないようだ。この論文では、「いつ、だれに、何を」売るのかを3点セットで予測する方法として、「ベイズ推定」に基づく統計的手法を紹介している。とはいえ、ビジネス雑誌で数式を長々と紹介することは読者の期待に合致しないと編集部が判断したためか、「この手法を使うと、予測の精度が○○%上がる」といった効果に偏った記述が目立つ。ベイズ推定を知るためには、専門の本を読むしかなさそうだ。

 便利で不愉快な機能過多を排す(ローランド・T・ラスト、デボラ・ビアナ・トンプソン、レベッカ・W・ハミルトン)
 顧客は製品の購入前には多機能を好むが、購入後には限られた機能しか使わず、機能過多に嫌悪感すら抱く。マーケターがこのような顧客の行動特性を知らずに、市場調査や市場テストから得られる情報ばかりに捉われていると、機能過多の製品ができあがってしまう。機能過多は短期的には売上を伸ばすものの、長期的には売上を減少させるため、マーケターは適切な機能の数に気を配らなければならない、というのがこの論文の趣旨。

 冒頭のような顧客の行動特性は、企業には「顧客のわがまま」に映るかもしれない。しかし、企業が顧客に行動の是正を促すことなどおよそ不可能だ。ドラッカーの言葉を借りれば、「一見、不合理な行動をとるとしても、顧客は常に正しい」のである。行動を変えられるのは企業自身でしかない。
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