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April 17, 2006

【ミニ書評】『BRICs 30億人市場の近未来(DHBR2006年5月号)』

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Harvard Business Review (ハーバード・ビジネス・レビュー) 2006年 05月号 [雑誌]Harvard Business Review (ハーバード・ビジネス・レビュー) 2006年 05月号 [雑誌]

ダイヤモンド社 2006-04-10

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 DHBRでは年に一度ほど諸外国の特集が組まれる(昨年は5月号で中国が特集され、大前研一氏が論文を寄稿している)ようだが、今年はBRICsが取り上げられている。

《収録されている主な論文》
 制度分析で読み解くBRICs攻略法(タルン・カーナ、クリシュナ・G・パレプ、ジャヤント・シンハ)
 BRICsに進出しようとする企業は、(1)政治制度と社会制度、(2)経済の開放性、(3)製品市場、(4)労働市場、(5)資本市場の5つの観点から十分な制度分析を行うべきだと提唱する。内容そのものは戦略論の外部環境分析とさほど違いはない。しかし、BRICsに進出する際にはどうしても市場規模の大きさ(特に中国とインド)という魅力ばかりに目を奪われてしまう。こうした勇み足に対する警告を発する論文。

 ブラジル市場の光と影(マリオ・アルメイダ、ハイメ・マトス)
 ブラジルはBRICsの中で最も外資に寛容であると言われる。消費者もグローバル・ブランドの製品を好んで購入する傾向がある。そのため、ブラジルへ進出するグローバル製造業は成功することが多い。しかし、高金利、非効率な株式市場、不平等な金融機関(ほぼ間違いなく地元企業への融資が優先される)が事業の成長を損ねる可能性がある。

 ロシア・ビジネスの十戒(エレナ・エフグラフォワ)
 インドや中国に比べると、ロシアの情報量は圧倒的に少ない。しかし、筆者(ロシア人)によると、ロシア人は「底抜けに楽天的」で、「ウィン・ウィンに無頓着」であり、「ゼロサム志向」が強いらしい。こうしたロシア人の気質を理解することがロシア進出を成功させる一つのカギとなる。ただ、旧共産圏の国家全般に言えることだが、ロシアにおける賄賂の横行ぶりや政府の過剰な介入(嫌がらせ?)はすさまじい。こうした問題にも適切に対処する必要があると筆者は主張する。近隣諸国との政治的緊張や、急速に進む少子化に関する言及がなかったので、ちょっと物足りない。

 インドの成長力は本物である(アルン・クマール・ジャイン)
 今や知識産業国家となったインドだが、25歳以下の人口が人口全体の約半分を占め、国内に10億人もの巨大な市場を抱えていることを考えると、まだまだ成長は続きそうである。かつて、途上国は先進国に原材料や農作物を輸出して外貨を貯め、先進国から最終製品を輸入するという図式が一般的であり、このプロセスを通じて先進国の仲間入りをしてきた。ところが、インドはその段階をすっ飛ばしていきなり知識産業に投資し、爆発的な成長を遂げた点で、新しい経済発展のパターンであると言える。

 中国人社員のやる気を引き出す法(顔傑華)
 中国人と日本人の気質には類似点が多い。しかし、中国に日本企業が進出しても、高評価を得られるのは製品品質のみで、働き甲斐のある職場となると日本企業の評価は一気に下がる。中国人は欧米企業の経営手法を好んで取り入れ、日本的経営には難色を示している。事実、終身雇用よりも成果主義的な報酬体系の方が中国人には受けがいい。日本企業も欧米型の給与体系にすべきだと忠告する。会社においても家族的な絆を重視する中国人が、過度の個人主義に走りがちな成果主義を好むというのは、何とも不思議な話である。ひょっとしたら、成功している中国企業の中には、”個人主義に走り過ぎない”成果主義をうまく設計・運用しているところがあるのかもしれない。
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