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September 15, 2005

労働生産性が向上しても労働力人口の割合が低下すれば1人あたりGDPは減少する

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 人口減少社会においては、必然的に労働力の投入量が減少するため、全体の生産量がある程度縮小するのは止むを得ません。生産量の減少率が労働力の減少率を上回らないようにするためには、労働者一人当たりの生産性を向上させる必要があります。
 日本人は江戸時代後期と同じく再びゼロ成長の時代を迎えている。人口減少社会では全体の国内総生産(GDP)の増大を見込めないとしても、1人当りの売上高・利益率を増やす方策を構築すればよいのだ。
(猪瀬直樹著『ゼロ成長の富国論』)
ゼロ成長の富国論ゼロ成長の富国論
猪瀬 直樹

文藝春秋 2005-04-25

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 この点に関して、森永卓郎氏が次のようなことを述べていました。
 経済的に見ても、OECD諸国の間で労働力人口の伸びと生産性の伸びとを比べると、やっぱり働き手が減ると生産性が上がるんですね。というのも、省力化投資など、いろいろと工夫を凝らすからです。
(カレル・ヴァン・ウォルフレン、森永卓郎著『年収300万円時代 日本人のための幸福論』)
年収300万円時代 日本人のための幸福論年収300万円時代 日本人のための幸福論
カレル・ヴァン・ウォルフレン 森永 卓郎

ダイヤモンド社 2005-05-19

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 そんな簡単に労働生産性は上がるのか!?と思って調べてみたら、おそらく森永氏が根拠としているであろう調査結果が見つかりました。

  平成17年度 年次経済財政報告(経済財政政策担当大臣報告)
 そこで、我が国の労働生産性上昇率と労働力人口の増減率との関係を時系列でみると、生産性の上昇と人口の減少に負の関係は確認されない。特に1988年以降は労働力人口が鈍化から減少傾向で推移する中で、労働生産性の伸びは緩やかに鈍化している。一方、アメリカを例にとると、これらには負の関係が存在しており、1975年以降は、労働力人口の増加率が鈍化傾向で推移する中で労働生産性上昇率が高まっていることが確認される。また、OECD諸国について90年代以降のこれらの関係をみると、国ごとのばらつきが小さくないことに留意する必要があるものの、スウェーデンなど既に労働力人口の減少が生じている国や労働力人口の伸び率が低い諸国においては、相対的に高い労働生産性上昇率が実現されている。

 確かに労働生産性は上昇している。ただ、森永氏の見解を文字通りに受け止めるのは少しばかり危険な気がします。年次経済財政報告で言及されている「労働生産性」という言葉には注意が必要です。

 上記報告において、労働生産性は次のようにして求められています。
 労働生産性=実質GDP〔付加価値額〕÷就業者数
 この式はさらに次のように分解して考えることができます。
 労働生産性=資本装備率×資本生産性

 資本装備率=有形固定資産÷就業者数
 資本生産性=実質GDP〔付加価値額〕÷有形固定資産
 資本装備率は、就業者一人に割り当てられた有形固定資産(土地、建物、機械など)の額を表します。資本生産性は、有形固定資産から実質GDP〔付加価値額〕を生み出す効率性を意味します。

 有形固定資産はそんなに簡単には減らないので、人口が減少すると資本装備率が上昇し、労働生産性を押し上げる方向に働きます。また、最近では伝統的な資本集約的な産業に比べて、大規模な資本ストックを必要としない労働集約的、知識集約的な産業の割合が高まっていることも、労働生産性を向上させます。

 すなわち、人口が減少すると労働生産性が上昇するというのは、労働者が生産性を上げるべく努力をしているというだけでは説明できない側面があるということです。

 結局、労働生産性という概念が曲者なのです。特に知識労働者の生産性は伝統的な生産性の概念では測ることができません。伝統的な有形固定資産に比べ、知識という新たな資本が決定的な意味を有する現代において、私たちは新しい生産性の概念を必要としています。そしてそれを手に入れたときに初めて、労働生産性を上げるためにはどうすればよいかを考えることができるのです。

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