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   新ブログ 谷藤友彦ー本と飯と中小企業診断士
August 20, 2005

マネジメントが前提とする人間像=「自己実現と自由を希求する人間」が揺らいでいる?

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 マネジメントは、主に組織における人間の諸活動に関する原則なので、人間の本質をいかなるものと捉えるかは、議論の重要な出発点になります。

 これまでのマネジメントが前提としてきた人間の本質として、以下の二点を指摘することができるでしょう。


(1)人間は成長志向性を有しており、自己実現を目指し、やりがいを求めて仕事に挑戦しようとしている。

 マズロー欲求五段階説ハーツバーグ動機づけ・衛生要因理論アージリス未成熟・成熟理論マグレガーX理論・Y理論エドワード・デシ内発的動機づけ理論などはこれを前提としている。

(2)人間は自由を求めており、自由と引き換えに責任を引き受ける準備ができている。

 「自由とは、責任を伴う選択である。自由とは、権利というよりもむしろ義務である。…自由とは、何かを行うか行わないかの選択、ある方法で行うか他の方法で行うかの選択、ある信条を信奉するか逆の信条を信奉するかの選択である。…意思決定と責任が伴わなければ自由ではない。」
(P・F・ドラッカー著、上田惇生訳『産業人の未来』)

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P・F・ドラッカー 上田 惇生

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 ドラッカーは初期の段階から、何かを行うための権限よりも、自由とそれに伴う責任に焦点を当ててマネジメント論を展開してきました。


 しかし、現実には仕事を通じての自己実現を望んでいない人や、チャレンジはごめんだという人、自分の能力に見合わない責任は負いたくない人も無視できない割合で存在します。

 1970年代のアメリカのある調査では、高水準の欲求を満たすことを望み、挑戦的な仕事に積極的な反応を示す労働者の割合は、約15%だったそうです。もちろん、仕事に対する考え方はそれ以来変化していますが、それを加味したとしても、現在もその数字はそれほど大きくなるとは考えられません。日本でも、事情はほぼ同じと考えていいと思います。

 つい先日も、日本人の勤勉さがかつてほどではなく、むしろ日本人の勤勉は今後長続きしないと考える人が増加していることを示す調査結果が出ていました。成長には勤勉さが不可欠な要素であるとするならば、これは憂うべき事態なのかもしれません。

 こうした事実は決して見逃すことができないものです。それでもあらゆる人間が自己実現を目指し、進んで責任を引き受けることができるように変化を促すのがマネジメントの使命なのか、反対に、事実は事実として受け止め、従来のマネジメント論の路線を踏襲しつつも、新たな方向性を模索するのがあるべき姿なのか、私にとっては非常に悩ましい問題です。
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