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   新ブログ 谷藤友彦ー本と飯と中小企業診断士
July 09, 2005

知識労働者を主体とする組織社会の4つの前提

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 時々「日本の組織社会が崩壊した」と言われることがありますが、日本から組織社会は全く消えていません。むしろますます多くの人々が何らかの組織の一員として仕事をするようになっています。「日本の組織社会が崩壊した」のではなく、正確には「日本の組織社会から、かつての家族主義的、コミュニティー的要素が消え去った」のです。

 日本の組織社会はこれからさらに重要になります。しかし、その性質はこれまでのものとは全く異なるものになるでしょう。

 (1)これからの組織の適正規模は非常に小規模になる。

 かつての組織が必要としていた資本は土地や工場、機械などの設備でした。それらの資本には、いわば規模の経済性が働きました。資本が多ければ多いほど、コストを減少させ、収穫を逓増させることができました。スケールメリットを求めて、企業はどんどん規模を拡大していったのです。

 しかし、現代の組織が立脚しているのは知識という資本です。知識には規模の経済性が働きません。規模の経済性が働くためには、追加した資本が既存の資本と同一の生産活動をしなければなりません。しかし、知識集約的な労働においては、隣の知識労働者はいつも自分とは異なる分野に取り組み、異なる成果を作り出しています。それぞれの知識労働者が生み出した成果をさらに集約することによって、組織の成果を産出するのです。

 求められるのは大規模な組織ではなく、深い専門性を擁した知識労働者と、彼らが容易に結束することができるだけの機敏性、小回り性、機動性を備えた組織なのです。そうした組織は自ずと小規模にならざるを得ません。具体的には、(産業によって異なりますが)数十人単位の組織になると思います。


 (2)組織は限定された明確な目的のために存在し、その目的の達成に全総力を注ぎ込むことになる。

 小規模の組織が専門的な労働者を抱える場合、最も優れた成果をあげようとするならば、組織の目標は限定されていなければなりません。欲を出して多少でも目的を広く設定しようとするならば、すぐに組織のキャパシティーを超えてしまいます。

 そして目的を設定したならば、あとは組織の強みを生かして、目的の達成のために総力をかけて活動をすることが求められるのです。それが、知識労働者を動機づける最良の方法です。余計な回り道や停滞は、知識労働者の性格に反します。


 (3)これからの組織は、規模が小さいにもかかわらず、大きな市場と数多くの強力な競合を相手に競争をしなければならなくなる。

 人的規模が小さいことは、その組織が向き合っている市場の規模も小さいということを必ずしも意味しません。むしろ、知識資本にとっての脅威はあらゆるところからやってきます。組織が競争優位を保っていると思っていた知識が、明日にも陳腐化する可能性は十分にあるのです。

 これからの組織が直面している市場は、かつての産業構造論が論じたような市場の定義よりも、はるかに広範囲を対象としたものでなければならないのです。戦略論で言うところのドメインの設定は、より慎重でなければなりません。


 (4)知識労働者に成長の場を提供し、彼らの生きがいの獲得や自己実現を手助けすることができない組織は、労働市場において淘汰される。

 これはかつてなら考えられなかったことです。組織が淘汰されるのは、常に顧客の市場においてでした。顧客に優れた価値を提供することができない組織は、顧客の市場からの退出を余儀なくされました。

 一方、労働市場においては、組織は労働者よりも優位性を常に保ってきました。組織が労働者を選別し続けてきたのです。失業者の大半は、組織から不要とされた人々でした。

 しかし、知識労働者は組織を選別します。自らの成長を実現することができる組織を捜します。かつては「この組織では自己実現ができるか」という問いすら発することを許されなかったのですが、今ならこの問いに関する情報を手に入れることができるのです。労働市場における優劣の関係が逆転しつつあります。知識労働者が望む雇用環境を提供できない組織は、労働市場から退出を命じられるのです。
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