※2012年12月1日より新ブログに移行しました。
>>>現行ブログ free to write WHATEVER I like
⇒2019年にさらにWordpressに移行しました。
>>>現行HP シャイン経営研究所(中小企業診断士・谷藤友彦)
⇒2021年からInstagramを開始。ほぼ同じ内容を新ブログに掲載しています。
>>>Instagram @tomohikoyato
   新ブログ 谷藤友彦ー本と飯と中小企業診断士
July 05, 2005

知識労働の生産管理は製造現場の生産管理に比べて不十分

拍手してくれたら嬉しいな⇒
 知識労働者は毎日何らかの「成果物」を生産している。その成果物は、他の知識労働者が自らの活動のために必要とするものである。そして他の生産者も同様に、新たな成果物を生産して、別の知識労働者に引き渡している。

 ソフトウェア開発では、顧客の業務分析、顧客とのヒアリングを踏まえて設計者が基本設計書や詳細設計書を作成する。開発者はその設計書を元にプログラムを書く。プログラムは相互に依存関係があるのが普通なので、ある開発者が、別の開発者の開発したプログラムを自分のプログラムに組み込んでプログラムを完成させる。

 知識労働者の組織も、一種の生産プロセスである。しかし、知識労働者の生産プロセスが一般の生産プロセスと大きく異なるのは、知識労働者の組織では、仕掛品が一方的に流れていく工場の生産ラインとは異なり、やり取りされる成果物の流れが全方向的でかなり複雑である点である。

 理想のソフトウェアは、各プログラム間の依存度が低く(=1つのプログラムから呼び出す他のプログラムの数が少なく)、プログラムの独立性が高いこととされる。しかし現実には、プログラムの処理自体の依存関係はなくても、プログラム同士が互いに影響をもつことがある。例えば類似の処理をしているプログラムでは処理順序を揃えたほうが望ましい。1つの成果物を必要とする人は意外と多い。

 知識労働者の成果物は変更を容易に求められる。成果物の元になった情報に関して、何か新たな情報が入れば、即座に成果物に影響が出る。成果物そのものが使えなくなってしまうこともある。しかも、成果物の流れは全方向的なので、その成果物の変更によって影響を受ける範囲は非常に広い。

 ソフトウェア開発の現場では、「戻り」が頻繁に発生する。仕様変更は必ず存在する。仕様変更があるたびに、どのくらいの影響範囲があるのか、プログラムの修正に漏れがないか誰もが神経を尖らせる。

 工場の生産管理に関しては数多くの理論が提唱されてきた。しかし、知識労働の生産管理に当たる理論はまだ不十分である。知識労働には、工場労働と類似する点もあれば、異なる点も多い。知識労働には独自の生産管理の手法が必要であると思う。
トラックバックURL

このエントリーのトラックバックURL:

コメントする